エアロプレスのレシピ|標準法とインバート法の手順を比較

エアロプレスのレシピ|標準法とインバート法の手順を比較

エアロプレスは、2005年にアメリカのエンジニアAlan Adlerが発明した手動式のコーヒーメーカーである[4]。円筒形の抽出室とプランジャー、フィルターキャップで構成され、粉を浸漬したあとプランジャーで押し出して抽出する[4]。標準法とインバート法という2つの淹れ方があり、それぞれ抽出時間や濃度の調整方法が異なる。両者の手順を比較し、比率・湯温・撹拌といったパラメーターを数値で示す。

エアロプレスの基準レシピとアレンジ エアロプレスの基準は、90〜96℃の湯200〜250mlを注ぎスプーンやパドルで5〜10秒撹拌し、プランジャーを20〜30秒かけて押し下げる。焙煎度で湯温を変え、浅煎り95〜96℃、深煎り85〜90℃。標準法とインバート法があり、インバートは浸漬時間を長く取れる。アレンジは、濃縮抽出(粉15gに湯100ml=1:6.7)に湯を足す、アイス(粉15gに湯150ml=1:10)を氷100gに直接落とす、濃縮にホットミルクを加えるなど。 エアロプレス・レシピ:基準とアレンジ 数値で管理できるから再現性が高い。濃縮すればアレンジも自在 基準レシピ 湯 90〜96℃を200〜250ml → 撹拌5〜10秒 → プランジャーを20〜30秒で押す 湯温:浅煎り95〜96℃ / 深煎り85〜90℃ (標準法とインバート法) アレンジ 濃縮 → 湯足し 粉15g:湯100ml(1:6.7) に湯100〜150ml アイス 粉15g:湯150ml(1:10) を氷100gへ直接 ミルク 濃縮にホットミルク 150mlでラテ風 撹拌が多いほど濃くなるが、激しくすると微粉が増え詰まりやすい。押す抵抗が軽くなる直前で止めると雑味が出にくい。 出典:SCA「Coffee Standards」/粕谷哲『4:6メソッド』(本文・参考文献に対応) 図解:coffee-pick.com
目次

標準法の手順

エアロプレス 標準法の手順 正立(標準)法。粉に湯約200g(80〜90℃)を注ぎ、2〜3回撹拌して約1分浸漬し、20〜30秒かけてプレスする。湯温を下げると酸を穏やかにできる。 標準法の手順 正立・湯約200g・80〜90℃/浸漬とプレスの複合 0:00 1 粉+湯 湯200g 80〜90℃ 0:10 2 撹拌 2〜3回 1:00 3 待機 浸漬 1:30 4 プレス 20〜30秒 標準法は正立で浸漬→プレス。湯温を下げると酸を穏やかにできる。 本文「標準法の手順」に対応 図解:coffee-pick.com

標準法は、エアロプレスを正立させてフィルターキャップを下にし、サーバーやカップの上に直接セットする淹れ方だ。公式マニュアルに記載された基本的な方法であり、短時間で抽出できる点が特徴となる。

器具のセットと粉の投入

フィルターキャップにペーパーフィルターをセットし、湯で濡らして紙臭さを取り除く。抽出室を正立させてサーバーに載せ、挽いた粉を投入する。粉量は15〜17gが目安であり、中挽き程度に挽いておく。粉を入れたら軽く揺すって表面を平らにする。

湯を注いで撹拌・押し出し

90〜96℃の湯を200〜250ml注ぎ、スプーンまたは付属のパドルで5〜10秒撹拌する[1][2]。撹拌後、プランジャーを挿入して20〜30秒かけてゆっくり押し下げる。抵抗が急に軽くなる直前で止めると、雑味が出にくい。抽出が終わったらキャップを外し、プランジャーを押し出して粉を捨てる。

標準法のメリットと注意点

標準法は抽出開始から1分前後で完成するため、朝の忙しい時間帯に適している。ただし、湯を注いだ瞬間から液体がフィルターを通過し始めるため、浸漬時間を厳密にコントロールしにくい。浅煎り豆で酸味を引き出したい場合は、次項のインバート法のほうが抽出時間を延ばしやすい。

ある焙煎士の視点

標準法は粉層が薄く、湯が早く通過するため、焙煎度が浅い豆では抽出不足になりやすい。中深煎り以上の豆を使うと、短時間でもボディが出やすく安定する。

インバート法の手順

インバート法は、エアロプレスを逆さまに組み立て、プランジャーを下にして抽出する淹れ方だ。浸漬時間を自由に設定できるため、浅煎り豆や複雑なフレーバーを持つスペシャルティコーヒーに向いている。

逆さま組み立てと粉の投入

プランジャーを抽出室に1〜2cm挿入し、逆さまに立てる。この状態で粉15〜17gを投入し、表面を平らにする。プランジャーのゴムパッキンが密閉するため、湯を注いでも液体が漏れない。

湯を注いで浸漬・撹拌

90〜96℃の湯を200〜250ml注ぎ、スプーンで10秒ほど撹拌する[1][2]。撹拌後、1〜2分浸漬させる。浸漬時間が長いほど濃度が上がるため、好みに応じて調整する。浸漬中は蓋をせず、表面に泡が浮かぶ様子を観察できる。

反転して押し出し

浸漬が終わったら、フィルターキャップを装着してサーバーを上に載せ、素早く反転させる。プランジャーを20〜30秒かけて押し下げ、抽出液を絞り出す。反転時に湯がこぼれないよう、サーバーとエアロプレスをしっかり押さえる。

インバート法のメリットと注意点

インバート法は浸漬時間を自由に設定できるため、浅煎り豆の酸味や甘みを引き出しやすい。一方、反転時に湯がこぼれるリスクがあり、慣れるまで注意が必要だ。また、浸漬時間が長すぎると渋みや苦味が出やすくなる。

ある淹れ手の視点

インバート法は浸漬式に近い抽出であり、フレンチプレスやカッピングと似た味わいになる。ハンドドリップで透明感を重視する場合は標準法、ボディと甘みを重視する場合はインバート法を選ぶとよい。

比率・湯温・時間のパラメーター

エアロプレスのレシピは、粉と湯の比率・湯温・抽出時間の3要素で決まる。Specialty Coffee Association(SCA)は、粉と湯の比率を1:15〜1:18、抽出温度を約90〜96℃とする基準を示している[1]。National Coffee Association USA(NCA)も、水180mlあたり挽き豆約10g(1:18相当)を目安に挙げている[2]

推奨パラメーター表

以下の表は、標準法とインバート法それぞれの推奨パラメーターをまとめたものだ。

項目標準法インバート法
粉量15〜17g15〜17g
湯量200〜250ml200〜250ml
比率1:13〜1:171:13〜1:17
湯温90〜96℃90〜96℃
撹拌時間5〜10秒10秒
浸漬時間0〜30秒1〜2分
押し出し時間20〜30秒20〜30秒
合計時間約1分約2〜3分

比率の調整

濃いめが好みなら1:13、すっきり飲みたいなら1:17に設定する。粉15gに対して湯195mlなら1:13、湯255mlなら1:17となる。World Brewers Cup 2016で優勝した粕谷哲氏の4:6メソッドは、粉15gに対し湯225g(1:15)を基準としている[3]。エアロプレスでも1:15前後が中庸な比率として扱いやすい。

湯温の調整

焙煎度が浅いほど高温(95〜96℃)、深いほど低温(85〜90℃)にする。浅煎り豆は高温で抽出しないと酸味が尖りやすく、深煎り豆は高温だと苦味が強く出すぎる。湯温計を使わない場合、沸騰後30秒〜1分待つと約90〜95℃に下がる。

抽出時間の調整

標準法は合計1分前後、インバート法は2〜3分が目安だ。浸漬時間が長いほど濃度が上がるが、3分を超えると渋みが出やすくなる。短時間抽出でも、エアロプレスは加圧によって効率よく成分を抽出できる[4]

ある焙煎士の視点

エアロプレスは浸漬時間が短いため、焙煎直後のガスが抜けていない豆でも使いやすい。ハンドドリップだと粉が膨らみすぎて湯が通りにくくなるが、エアロプレスは加圧で押し出すため影響を受けにくい。

撹拌の役割と回数

撹拌は、粉と湯を均一に接触させて抽出効率を高める操作である。回数とタイミングで濃度をコントロールできる。

撹拌のタイミング

標準法では湯を注いだ直後に5〜10秒撹拌し、その後すぐにプランジャーを挿入する。インバート法では湯を注いだ直後に10秒撹拌し、1〜2分浸漬させる。浸漬中に追加で撹拌すると濃度が上がるが、やりすぎると渋みが出る。

撹拌の回数と濃度

撹拌回数が多いほど粉と湯の接触面積が増え、濃度が上がる。標準法では5〜10回、インバート法では10〜15回が目安だ。スプーンまたは付属のパドルで、粉層全体を上下に混ぜるように動かす。激しく撹拌すると微粉が増え、フィルターが詰まりやすくなる。

撹拌しない場合

撹拌を省略すると、粉層の上部と下部で濃度差が生じる。上部は薄く、下部は濃くなるため、全体として抽出不足になりやすい。ただし、撹拌しないほうが透明感のある味わいになるという意見もあり、好みで選んでよい。

ある淹れ手の視点

撹拌は浸漬式抽出の基本操作であり、カッピングでも必ず行う。エアロプレスでは撹拌回数を増やすほどフレンチプレスに近い味わいになり、減らすほどハンドドリップに近づく。

アレンジレシピ

エアロプレスは濃縮抽出してから加水するアレンジがしやすい。濃いめに淹れてお湯や牛乳を足すと、エスプレッソベースのドリンクに近い味わいになる。

濃縮抽出+加水(アメリカーノ風)

粉15gに対して湯100ml(1:6.7)で抽出し、出来上がった濃縮液に湯100〜150mlを加える。合計200〜250mlになり、通常のレシピと同じ濃度に調整できる。濃縮抽出では湯温を少し下げ(85〜90℃)、苦味を抑えるとよい。

アイスコーヒー

粉15gに対して湯150ml(1:10)で抽出し、氷100gを入れたグラスに直接落とす。氷が溶けて合計250mlになり、冷たいアイスコーヒーが完成する。氷で急冷すると酸味が際立ち、すっきりした味わいになる。

カフェラテ風

粉15gに対して湯100ml(1:6.7)で抽出し、温めた牛乳150mlを加える。エスプレッソマシンがなくても、ミルク感の強いドリンクを作れる。牛乳を泡立てるとカプチーノ風になる。

その他のアレンジ

項目内容
冷水抽出常温の水を使い、冷蔵庫で12〜24時間浸漬させる[5]。コールドブリューに似た味わいになる。
二度抽出一度抽出した粉に再度湯を注ぎ、二杯目を作る。濃度は薄くなるが、ほのかな甘みが残る。
ある焙煎士の視点

濃縮抽出は深煎り豆に向いている。浅煎り豆で濃縮すると酸味が強く出すぎるため、通常比率で淹れて氷で冷やすほうが飲みやすい。

うまく淹れるコツと必要な道具

エアロプレスを安定して淹れるには、スケールと湯温計を使い、パラメーターを数値で管理する。以下に必要な道具とコツをまとめる。

必要な道具

項目内容
エアロプレス本体抽出室、プランジャー、フィルターキャップで構成される[4]
ペーパーフィルター公式フィルターまたは互換品。金属フィルターを使うとオイル感が増す。
スケール0.1g単位で計量できるものが望ましい。粉量と湯量を正確に測る。
湯温計90〜96℃を測れるデジタル温度計。沸騰後の待ち時間を一定にしてもよい。
グラインダー中挽き程度に挽く。粒度が揃っていると抽出が安定する。
タイマー浸漬時間と押し出し時間を測る。スマートフォンのタイマーで十分だ。

うまく淹れるコツ

1. 粉量と湯量を毎回測る: 目分量で淹れると再現性が低くなる。スケールで必ず計量する。

2. 湯温を一定にする: 焙煎度に応じて湯温を決め、毎回同じ温度で淹れる。

3. 撹拌回数を揃える: 10回なら毎回10回、5回なら毎回5回と決める。

4. プランジャーをゆっくり押す: 急いで押すと雑味が出やすい。20〜30秒かけて均等に圧をかける。

5. フィルターを湯で濡らす: 紙臭さを取り除き、抽出室との密着性を高める。

よくある失敗と対処法

項目内容
薄い・物足りない粉量を増やす、湯量を減らす、撹拌回数を増やす。
苦い・渋い湯温を下げる、浸漬時間を短くする、撹拌回数を減らす。
酸味が尖る湯温を上げる、浸漬時間を延ばす、粉を細かくする。
プランジャーが重い粉が細かすぎる、撹拌しすぎて微粉が増えている。粉を粗くする。
ある淹れ手の視点

エアロプレスは失敗が少ない抽出器具だが、粉量と湯量を測らないと毎回味が変わる。スケールさえあれば、初心者でも安定した味を再現できる。

結論

エアロプレスは標準法とインバート法という2つの淹れ方があり、前者は短時間で抽出でき、後者は浸漬時間を自由に設定できる[4]。粉と湯の比率は1:13〜1:17、湯温は90〜96℃、撹拌は5〜15回が目安だ[1][2]。濃縮抽出してから加水すれば、アメリカーノ風やカフェラテ風のアレンジも可能である。スケールと湯温計を使い、パラメーターを数値で管理すれば、再現性の高いコーヒーを淹れられる。エアロプレスの抽出原理や加圧メカニズムについては、別稿「エアロプレスの原理」で詳しく解説している。

参考文献

  1. Specialty Coffee Association「Coffee Standards」(抽出基準: 比率・収率18–22%・TDS1.15–1.45%)
    https://sca.coffee/research/coffee-standards
  2. National Coffee Association USA「How to Brew Coffee」(ゴールデンレシオ・湯温の基準)
    https://www.ncausa.org/About-Coffee/How-to-Brew-Coffee
  3. 粕谷哲『4:6メソッド』(World Brewers Cup 2016優勝者の公開レシピ)
    https://philocoffea.com/
  4. AeroPress, Inc. 公式サイト(エアロプレスの構造・標準法/インバート法)
    https://aeropress.com/
  5. National Coffee Association USA「How to Make Cold Brew Coffee」(水出しの比率・浸漬時間)
    https://www.ncausa.org/About-Coffee/How-to-Make-Cold-Brew-Coffee

この記事を書いた人

コーヒーを「なんとなく美味しい」で済ませない、Coffee Pick Lab。豆の品種から抽出収率まで、つい数字で語ってしまうコーヒーメディアです。一杯の裏にある歴史と科学を、一次資料と再現性を頼りに、できるだけ正確に、たまに脱線しながらお届けします。

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