世界で1年につくられるコーヒーは約1億8,967万袋——重さにして約1,138万トンにのぼります。このページでは生産量・消費量・生産国ランキング・品種や精製の地理・輸出入・国際相場・気候変動と2050年問題を、一次統計(USDA FAS・ICO・全日本コーヒー協会)と査読論文から拾い、毎年更新していきます。
世界の生産量
前年度の生産量(2025/26)
約1億7,883万袋
上位2カ国(ブラジル+ベトナム)
世界の約55%
世界の生産量は近年ゆるやかに増え、2026/27年度は前年度比+6.1%の過去最高が見込まれている。重さにすると約1,138万トン。伸びの大半はブラジルで、5年続いた不振からアラビカが回復し、同国の生産は7,190万袋と記録的な水準になる見通しだ。ただしこれは見通し値で、収穫の進行とともに改定される。
生産国ランキング Top10
ブラジルとベトナムで世界の半分
生産国の世界シェア・上位10カ国(2026/27・USDA予測)
ブラジルが突出し、2位ベトナムはロブスタ種が主体。上位10カ国で世界の約9割(89.4%)を占め、生産は一部の国に大きく偏っている。2026/27はブラジルのアラビカが5年ぶりに回復し、同国のシェアは37.9%へ上がる見通しだ。
出典:USDA FAS「Coffee: World Markets and Trade」2026年7月 / 世界シェアは当サイトで算出(分母=同表の世界計 189,667千袋)
世界のコーヒー生産地図|生産はどこに集中するか
主要生産国は、すべて赤道周辺の”コーヒーベルト”に並ぶ
世界のコーヒー生産地図(北緯25°〜南緯30°のコーヒーベルトと主な生産国の位置)
上のランキングに並んだ主要生産国を世界地図に置くと、そのすべてが赤道を挟む帯——コーヒーベルト(北緯25°〜南緯30°)の上に収まる。生産は大きく中南米・アフリカ・アジア太平洋の3つの地域に集まり、寒すぎず霜の降りないこの狭い帯だけがコーヒーの適地であることがひと目でわかる。各国のシェアは上の「生産国ランキング Top10」を参照。
地図制作:Coffee Pick / 主な生産国は USDA FAS「Coffee: World Markets and Trade」2026年7月にもとづく
コーヒーベルト|なぜ赤道周辺で作られるのか
赤道を挟んだ”帯”でしか育たない
コーヒー栽培に必要な条件(査読論文・ICO)
緯度帯
北緯25°〜南緯30°(通称)
年平均気温
14〜26℃
年間降水量
1,000〜2,700mm
栽培標高
400〜2,100m
コーヒーが商業栽培されるのは、赤道を挟んだ帯状の地帯——通称「コーヒーベルト」だ(この呼び名は業界の通称で、範囲の取り方は資料によって幅がある。おおむね北緯25度〜南緯30度と示されることが多い)。年平均14〜26℃・年降水量1,000〜2,700mmという条件が整い、コーヒーが致命的に弱い「霜」のリスクが小さい範囲に限られる。査読論文が定義する適地は緯度と標高の組み合わせで、赤道域(南北9度未満)では約1,000〜2,100m、その外側の熱帯域(南北9〜27度)では約400〜1,200mが向く。産地は中南米/アフリカ・中東/アジア太平洋の3地域に集中する。
出典:Ahmed ほか「Climate Change and Coffee Quality」Front. Plant Sci. 2021(気温14〜26℃・降水量1,000〜2,700mm・標高と緯度は原本の逐語。2026-09-02 照合)。★「コーヒーベルト」の緯度幅は通称であって一次資料の定義ではない
アラビカ種とロブスタ種の割合
半分強がアラビカ。ロブスタが追い上げている
世界の生産量に占める品種別シェア(2026/27・USDA予測)
かつてアラビカが6割近くを占めたが(ICOの2023/24年では57.4%)、ベトナムの回復とブラジルのロブスタ生産の増加で、ロブスタの比率は年々高まっている。
出典:USDA FAS 2025/26 / 参考:ICO 2023/24
アラビカとロブスタ|栽培環境のちがい
どの国がどちらを作るかは、栽培条件で決まる
アラビカ種とロブスタ種の栽培環境のちがい
ロブスタは低地・高温多湿でも育ち、さび病に強く高収量。だから低標高で大規模生産を志向するベトナムやインドネシアに向く。一方アラビカは高地の冷涼な気候で香りが高まり、原産地エチオピアや山岳国コロンビアの風土に合う。世界の生産が一部の国に偏るのも、この栽培条件のちがいが背景にある。※「適温」は年平均気温の最適域という定義(アラビカ18〜21℃。23℃を超えると成熟が早まり品質が落ちる)。ICO はより広く15〜24℃/24〜30℃を示しており、定義によって幅が変わる。
出典:標高とカフェインは ICO「Botanical Aspects」の比較表(保存版で逐語確認)/適温は DaMatta & Ramalho, Braz. J. Plant Physiol. 2006(アラビカ18〜21℃・ロブスタ22〜26℃/2026-09-02 逐語照合)/Kew POWO/Talhinhas et al. 2017(さび病)
品種の地理分布|どこでどの品種が育つか
世界中のアラビカは、たった2品種の子孫
栽培アラビカの2大祖先系統と、産地ごとに育つ主な品種(2025年・WCR品種カタログほか)
いま世界で栽培されるアラビカは、そのほとんどがこの2系統に行き着く。約35万〜61万年前のたった1度の交雑で生まれ、その後も栽培化の前にくり返し個体数の急減(ボトルネック)を経たため、遺伝的多様性は極端に狭い。だから1つの病気が世界の生産を脅かしうる。
産地クラスタ別・主役の品種と、その広がりを生んだ力
なぜ研究所の単木選抜(SL系)→CBD・さび病危機を受けた耐病育種へ
カティモール/サルチモール+ロブスタ主体
なぜ低地・高温とさび病圧→ティモールハイブリッド由来の耐病種が優勢
品種の地理的なかたよりは、3つの力で説明できる。①さび病(葉さび病)の圧力が、ロブスタ由来の耐病遺伝子を持つカティモール・カスティージョ・サルチモール・ルイル11などのハイブリッドを各地へ広げた。②収量と機械化(密植)の要請が、カトゥーラやカトゥアイのような背の低い矮性品種を生んだ。③標高と市場の評価が、高地で最高評価を得るゲイシャのようなプレミアム品種を押し上げた。同じ「コーヒーベルト」でも、どの品種が主役になるかは歴史と病気と経済で決まる。
出典:World Coffee Research「Arabica Coffee Varieties」品種カタログ/Salojärvi et al. 2024, Nature Genetics(交雑は「350,000〜610,000年前」・ボトルネックによる狭い変異。2026-09-02 逐語照合)/SCA「Coffee Plants of the World」
精製方法の地理|なぜ産地で製法が違うのか
精製方法は「好み」ではなく、土地が決めた
産地ごとに主流の精製方法と、その背景にある必然(水・気候・伝統・市場)
なぜ豊富な雨と小農。地域で収穫期がずれ、ほぼ周年収穫できる
ダブルウォッシュト(ケニア式)
なぜ2回の発酵+長時間の水浸し。発酵管理の伝統が澄んだ酸とカシス様の香りを生む
ウェットハル(ギリンバサ)
なぜ年中ほぼ降雨・高湿で完全に天日乾燥できない→半乾きで脱穀し乾燥を早める気候的必然
ナチュラル(ほぼ専一)
なぜ水が乏しい乾燥地。屋上・テラスでの天日乾燥という数百年の伝統
ロブスタのナチュラル/簡易乾燥
なぜ大量・低コスト供給が目的。乾燥式でインスタント・ブレンド向けにさばく
精製方法のかたよりは、産地の事情で説明できる。①ウォッシュトは大量の水と、発酵・乾燥できる天候を要する——伝統的な水洗は乾燥豆1kgあたり最大40Lもの水を使う(新技術で0.5Lまで削減可)。だから水の豊かなコロンビアやケニアで主流になり、水が乏しいイエメンや乾燥地はナチュラルへ向かう。②収穫期が高湿で乾かし切れないスマトラは、含水率およそ30〜40%の半乾きで脱穀するウェットハルという独自解にたどり着いた。③乾いた冬と平坦地のブラジルは大規模乾燥に向き、嫌気性発酵などの新手法はスペシャルティ市場が後押しする。なお、方法別の公式な生産割合を集計する機関は無く、ここでの「主流」は産地・専門商社・SCA系の知見にもとづく整理である。
出典:生産国機関 FNC(コロンビア)・CONAB(ブラジル)/SCA系専門メディア(Perfect Daily Grind・Daily Coffee News)/専門商社(Cafe Imports・Sweet Maria’s)/James Hoffmann『The World Atlas of Coffee』2018
国別の生産スタイル|伯・越・哥はなぜ違うのか
コーヒーの作り方は、その国の「地形」と「政策」で決まった
同じ生産国でも、生産の仕組みはまるで違う。代表3カ国を、検証できる数値と「なぜ」で対比する。
世界シェア
約38%
世界最大の生産国(USDA 2026/27)
主流の精製
ナチュラル主体
天日でフルーツごと乾燥(業界推定)
地形
平らなセラード
標高800m以上の平坦地(原産地呼称の要件)
なぜ:セラードやバイーア高原は標高がありながら起伏が小さく、収穫機と灌漑を入れられた。高い人件費も手摘みより機械収穫を経済合理にし、「大規模・低コスト・乾式」がブラジル型として定着した。ただし国内には大農園と小農が二層で併存する。
くわしく:ブラジルのコーヒー / 主要産地(セラード/ミナス) / ナチュラル精製
ロブスタ
世界の40%超
世界のロブスタ生産の40%超を占める最大の生産国(WCR)
農家構造
約64万戸
生産の97%が小農によるもの(WCR/統計総局・Enveritas 2018)
生産性
世界最高水準の単収
集約栽培+灌漑(FAO)
なぜ:1986年の経済改革「ドイモイ」で私企業が解禁され、政府が中部高原(ダクラク等)のロブスタ栽培を国策で後押しした。低地・高温・耐病性に強いロブスタは小農の量産に向き、四半世紀で世界2位の生産国に。主産地は中部高原の5省(ダクラク・ザライ・コントゥム・ダクノン・ラムドン)で、なかでもダクラクが最大だ。
くわしく:ベトナムの産地 / アラビカとロブスタの違い / ナチュラル精製
生産者世帯
約55万世帯
96%が5ha未満の小農で、国内生産の60%を担う(UPRA・農牧省 2024)
主流の精製
フルウォッシュ
手摘み+水洗の「マイルド」(FNC)
支える制度
FNC買取保証
1927年設立・研究所Cenicafé(FNC)
なぜ:アンデスの急峻な斜面は平地が乏しく収穫機が入らないため、手摘みが必須になる。完熟チェリーを選別でき、水洗精製のクリーンで酸のある品質に直結した。零細・分散した小農を、FNC(コーヒー生産者連合会)が買取保証・倉庫・研究で全国組織化した点が、ブラジル/ベトナムにない協同組合型の特徴だ。
くわしく:コロンビアのコーヒー / 主要産地 / ウォッシュト精製
3カ国を分けたのは、品種でも気候だけでもなく、地形と政策だ。平らなブラジルは機械を走らせて「量」を、急峻なコロンビアは手摘みで「質」を、国策で広がったベトナムはロブスタの「単収」を——それぞれの土地が出せる答えを最大化してきた。なお「平均農園規模」や「生産者世帯数」は機関・年次で定義差があり(コロンビアは54.9万世帯=UPRA 2024、ベトナムは64万戸=WCR/「60万戸超の小農世帯」=USDA 2026)、ここでは出典と年次を併記したうえで概数として示している。
出典:USDA FAS「Coffee: World Markets and Trade」2026年7月/USDA GAIN「Coffee Annual: Vietnam」2026年(中部高原5省・小農60万戸超)/World Coffee Research(ベトナム国別プロファイル)/UPRA・農牧省 2024年4月5日発表(コロンビア=54.9万家族・96%が5ha未満・国内生産の60%)/Federação dos Cafeicultores do Cerrado「Denominação de Origem」(ブラジル=標高800m以上が要件)/FAO『Diversification by smallholder farmers: Viet Nam Robusta Coffee』。一部の精製比率・平均規模は生産国機関の一次公表が無く業界推定を含む。
世界の消費量と消費国ランキング
「飲む国」と「作る国」は一致しない
主な消費国・地域の世界シェア(2026/27・USDA予測)
消費の中心は欧米。単一国ではアメリカが世界最大、地域ではEU、生産国ブラジルが3位につける。一方でベトナムやインドネシア、エチオピアなど生産国の国内消費も伸び、「作る国がそのまま大消費国になる」流れが進んでいる。
出典:USDA FAS「Coffee: World Markets and Trade」2026年7月・2026/27(Domestic Consumption) / ※EUは27カ国合算・世界シェアは当サイトで算出(分母=同表の世界計 179,736千袋)
一人当たりの消費量
北欧がずば抜けて飲む。日本は約3分の1
1人あたり年間消費量(kg/2023年・ICO)
北欧諸国が上位を占めるのは、寒冷な気候と在宅時間の長さ、「フィーカ」に代表される休憩文化が背景にある。日本は3.2kgで北欧上位の約3分の1。なお統計上はルクセンブルク(22.5kg)が突出するが、越境通勤者の購入や再輸出を含む「居住実態を反映しない数値」で、実際の飲用量とは異なる。
出典:ICO統計/全日本コーヒー協会(2025年7月公表・2023年値)
輸出入と貿易フロー|コーヒーはどう動くか
コーヒーは「生豆で出て、消費国で稼がれる」
産地が輸出するのはほとんどが生豆。焙煎・小売の付加価値は消費国側で生まれる。
世界の輸出量(全形態・2023/24コーヒー年度・ICO)
約1億3,727万袋
前年から11.7%増=統計史上最大級の伸び。生産国の在庫取り崩しと豊作が背景 ― ICO月次報告
輸出される形態の内訳
- 生豆 1億2,375万袋
- 可溶性 1,282万袋
- 焙煎 71万袋
輸出の約9割は焙煎前の生豆(1億2,375万袋)。インスタントの原料になる可溶性が約9%(1,282万袋)で、焙煎豆はわずか0.5%(71万袋)にとどまる。つまり産地は「焙煎する前の豆」を売り、香りをつけて売る工程は消費国側にある。
出典:国際コーヒー機関(ICO)「Coffee Market Report」2023/24コーヒー年度(全形態合計137.273百万袋)
主な輸出国|生豆の輸出額(2023年・億ドル)
輸出額でもブラジルが突出し、ベトナム・コロンビアが続く。生産量ではベトナムが2位だが、単価の高いアラビカ主体のコロンビアが金額で肉薄する点に、ロブスタとアラビカの値差が表れている。
出典:UN Comtrade / World Bank WITS(HS 090111「煎っていないコーヒー」輸出額・2023年)。基準年は2023年に据え置いている——UN Comtrade はその年を報告した国のぶんしか集計しないため、2024年へ動かすと未報告のベトナム(2023年の2位・29.8億ドル)が表からそっくり消え、残る国のシェアが実態より大きく出る(報告国 131→111・2026-09-01実測)。ここでは新しさより、国がそろっていることを優先した。
主な輸入先|どこへ向かうのか
最大の市場
EU(27カ国)
世界の輸入額の約46%(金額ベース)。生豆だけで年およそ290万トンを受け入れる(数量ベース・2023年)
単一国で最大
アメリカ
世界の輸入額の約19%・約82億ドル(2023年)
アジア有数
日本
生豆の輸入は年およそ36万トン(2024年)。ブラジル・ベトナム・コロンビアの3カ国で約7割(財務省)
なぜ「作る国」は豊かになりにくいのか。産地は輸出の約9割を生豆のまま出し、付加価値の大きい焙煎・ブレンド・小売の工程は消費国側に残る。EU(27カ国)の輸入額が約194億ドルに対し、最大の生産国ブラジルの生豆輸出額は約73億ドル——同じ豆をめぐる金額が、川下に行くほど大きく膨らむ。世界で約1.25億人がコーヒーで生計を立て、その担い手の多くは小農だが、彼らが受け取る価格は国際相場に大きく左右される。
なお「コーヒーは石油に次ぐ世界第2の貿易商品」という有名な言い回しは事実ではない。MITのデータ(OEC)ではコーヒーの貿易順位は世界100位前後で、小麦・大豆・金属など規模の大きい商品が多数ある。それでも数千万の小農の暮らしを支えるという意味で、社会的な重要性が大きい商品であることに変わりはない。
出典:ICO/UN Comtrade(HS 0901・2023年。輸入シェアは各国の輸入額の合計を分母に公開APIから再計算=世界合計420.6億ドル/EU27 193.7億ドル・46.07%/アメリカ82.0億ドル・19.50%。EUは27カ国の合算で域内の取引を含む。生豆の数量は HS090111+090112 の合計=約291万トン。★netWgt が空の国は altQty(kg)で補う——空欄を0として足すと258万トンに沈む)/財務省「貿易統計」・全日本コーヒー協会/Fairtrade(コーヒーで生計を立てる人口)/PolitiFact「No, coffee is not the second-most traded commodity after oil」(2017)
国際相場|コーヒー価格はどう決まり、なぜ動くのか
コーヒーの値段は、畑ではなく「市場」で決まる
生豆の国際価格は、ニューヨークとロンドンの商品先物市場で日々動く。だから遠いブラジルの天気が、あなたの一杯の値段を左右する。
世界の代表価格(ICO総合指標 I-CIP)の月次最高値
354.32 ¢/lb
2025年2月・月平均で記録上の最高値(ICO月報が1977年の高値として挙げる4月の314.96と3月の305.13をともに上回った。いずれも名目)。その後やわらぎ、2026年6月は248.90まで軟化 ― ICO月次報告
相場が決まる3つの市場
アラビカの指標
NYのC先物
建値は米セント/ポンド・1枚=37,500ポンド(ICE Futures U.S.)
ロブスタの指標
ロンドン先物
建値は米ドル/トン・1枚=10トン(ICE Futures Europe)
世界平均
ICO総合指標
アラビカ3群+ロブスタを加重合成した日次の代表価格(I-CIP)
価格を動かす5つの力
- ブラジルの天候(最大要因):世界最大のアラビカ産地。霜害や干ばつが起きると収量懸念で急騰する。2024年来の干ばつが2025年高騰の主因。
- ベトナムの天候:世界最大のロブスタ産地。不作になると安いロブスタからアラビカへ需要が移り、相場全体を押し上げる。
- 需給と在庫:取引所の認証在庫が細ると逼迫感が強まる。2024/25は期末在庫が前年比マイナスで価格を支えた。
- 投機・ファンドの建玉:先物市場ゆえ、不足を見込んだ買いや証拠金引き上げが値動きを増幅する。
- 為替・運賃・制度:ブラジルレアル安はドル建て価格の上昇要因。海上運賃やEU森林破壊防止規則(EUDR)のコストも価格に乗る(定性)。
相場を揺らしてきた出来事
7月の大霜害がパラナ等を直撃し、翌年作の7割超が被害。
結果世界価格が約2倍。ICO複合指標は1977年4月に月平均314.96まで上昇
2週間で2度の強い霜が翌年作を大きく削った。
結果記録的急騰(水準は報道ベース)
増産が続き、相場は長期の低迷局面に入った。
水準I-CIPは概ね100〜150¢台(概数)
7月のブラジル霜害と干ばつが重なり、需給が引き締まった。
結果約7年ぶりに2ドル/ポンド超
ブラジルの干ばつとベトナムの不作が同時に起きた。
最高値2025年2月 I-CIP 354.32=観測史上最高
ブラジルの供給改善見通しで、高値から落ち着きはじめた。
直近2026年6月 I-CIP 248.90(5月の256.05からさらに-2.8%)
相場の波は、結局のところ「ブラジルの空模様」と「投機マネー」が描いている。霜害や干ばつのたびに価格は跳ね、増産が追いつくと沈む——この半世紀、コーヒーは同じリズムを繰り返してきた。なお、ここでの先物の建値や数十年前の高値水準には報道経由のものが含まれ、月次のI-CIPはICOの公表値にもとづく。日々の最新値はICOと取引所で更新される。
出典:国際コーヒー機関(ICO)「Public Market Information」「Coffee Market Report」各月/ICE Futures U.S.「Coffee C Futures」・ICE Futures Europe「Robusta Coffee Futures」(取引仕様)/World Bank「Commodity Markets(Pink Sheet)」。1977年・1994年・2021年の価格水準には業界メディア・報道経由の値を含む。
気候変動と2050年問題|コーヒーは飲めなくなるのか
2050年、コーヒーの「適地」は半分になりうる
気候変動が栽培適地・品質・生物多様性に与える影響(複数の査読研究)
栽培に適した土地の減少見通し(2050年)
最大 50%超
アラビカの適地が半減するとの予測。残る適地も平均で標高300m以上、高い土地へ押し上げられる ― Bunn 2015/Grüter 2022
適地
半分以下に
2050年までに最も適した土地が50%超減。主要産地すべてで悪化(Grüter 2022)
失われるのは低地
標高1,000m未満
適地の損失は標高1,000m未満の低地に集中し、高地の損失は相対的に小さい(Bunn 2015)
野生種
60%が絶滅危機
野生アラビカはIUCNで「絶滅危惧(Endangered)」(Davis 2019)
なぜ気候変動がコーヒーを脅かすのか
- 気温の上昇:アラビカの適温はおよそ18〜21℃。これを超えると開花・結実・成熟のリズムが乱れ、30℃を超えると生育そのものが阻害される。
- 降水の不安定化:開花の引き金になる乾湿のリズムが崩れ、干ばつや豪雨が着果と収量を直撃する。
- 病害虫の拡大:温暖化で「さび病(葉さび病)」やコーヒーノミキクイムシが、これまで涼しかった高地・高緯度へ広がる。
- 品質の低下:高温は果実の成熟を早めすぎ、香味の形成が追いつかずにカップの質が痩せる。
- 適応の元手が乏しい:栽培アラビカは遺伝的多様性が極端に狭く、暑さに耐える素材そのものが少ない。
産地の未来図
最大級の産地で適地が大きく縮小
影響より高い土地への移動を迫られる。平地で機械化した産地ほど移れる余地が小さい
適地が「増えうる」数少ない地域(Bunn 2015)
課題適地が高地へ移ると森林や保護区との競合が起きやすい
野生アラビカの自生地が縮小
影響2088年までに野生の個体数が50%以上減るおそれ(一部のモデルは80%超・Moat ほか 2019)。品種改良の「原料」の危機
打ち手|適応の方向
- 高地・日陰栽培へ:より涼しい高地へ移し、シェードツリーで直射と気温を和らげる。
- 耐暑・耐病の品種改良:ロブスタの強さを取り込んだF1ハイブリッドやカティモール系など、暑さと病気に強い品種の開発・普及。
- 遺伝資源の保全:野生種・在来種を守り、将来の品種改良に使える多様性を確保する(Davis 2019)。
世界で約1.25億人がコーヒーで生計を立て、その担い手の多くは小農だ。「2050年問題」は、将来おいしい一杯を飲めるかという話にとどまらず、産地に生きる人々の暮らしの問題でもある。なお「適地が半減する」といった数値は、気候シナリオとモデルにもとづく予測であり、品種改良や栽培技術の進歩がこの結果を和らげうる点も押さえておきたい。
くわしく:コーヒーの2050年問題と、いま起きている適応の動き
出典:Bunn ほか「A bitter cup」Climatic Change 2015/Grüter ほか「Expected global suitability of coffee…」PLOS ONE 2022/Davis ほか「High extinction risk for wild coffee species」Science Advances 2019(野生コーヒー124種の60%が絶滅危機・野生アラビカはEN)/Moat ほか「Least concern to endangered」Global Change Biology 2019(2088年までに野生個体数が50%以上減)・IUCN/World Coffee Research/Fairtrade(コーヒーで生計を立てる人口)
統計の読み方|なぜ数字が違うのか
同じ「2023/24年」でも、生産量はUSDAが約1億6,935万袋、ICOが約1億7,800万袋と、約870万袋ずれる。原因は主に、①コーヒー年度(マーケティングイヤー)の起点が国ごとに10月・4月・7月と異なること、②集計手法の違いだ。だから本ページでは数値ごとに「どの機関の・いつのデータか」を必ず添えている。
また、最新年度の数字は確定実績ではなく見通し値で、後から改定される。たとえば2024/25年の世界生産量は、2025年12月時点の約1億7,532万袋から、2026年7月版では約1億7,682万袋へ上方修正された。本ページは年次更新で最新値に追従していく。
このデータの引用について
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資料室のほかの資料:日本のコーヒー統計/コーヒー用語事典/収穫時期カレンダー
このクラスターの記事
「統計(世界)」のガイドに属する各論を主題ごとに並べています(8本)。
相場と需給
流通と取引
- コーヒー認証ラベル図鑑|有機・レインフォレスト・バードフレンドリー
- コーヒーのサプライチェーン|農園から一杯までの流れ
- ダイレクトトレードとリレーションシップコーヒー
- フェアトレード・スペシャルティ・コモディティの違い|価格・流通・認証ラベルの読み方
環境と気候
- コーヒーの2050年問題|気候変動とサステナビリティを知る
- コーヒーのカーボンフットプリント|1kgで0.26kgか、消費まで含めた15kgか——単位と境界で桁も符号も変わる理由
- コーヒーと環境負荷|水・森林・エシカル消費
ほかの総論ガイドは資料室の一覧へ。
参考文献
- USDA Foreign Agricultural Service「Coffee: World Markets and Trade」2026年7月, https://www.fas.usda.gov/data/coffee-world-markets-and-trade, 取得日 2026-09-01
- International Coffee Organization「Coffee Report and Outlook」2023年12月, https://icocoffee.org/, 取得日 2026-06-21
- 全日本コーヒー協会「世界の一人当たりコーヒー消費量」(ICO統計・2025年7月公表), https://coffee.ajca.or.jp/data/, 取得日 2026-06-21
- Kew Science, Plants of the World Online「Coffea arabica」「Coffea canephora」, https://powo.science.kew.org/, 取得日 2026-06-21
- DaMatta FM ほか「Climate Change and Coffee Quality」Frontiers in Plant Science, 2021, https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpls.2021.708013/full, 取得日 2026-06-21
- Talhinhas P ほか「The coffee leaf rust pathogen Hemileia vastatrix」Molecular Plant Pathology, 2017, https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/mpp.12512, 取得日 2026-06-21
- Salojärvi J ほか「The genome and population genomics of allopolyploid Coffea arabica」Nature Genetics, 2024, https://www.nature.com/articles/s41588-024-01695-w, 取得日 2026-06-21
- Federación Nacional de Cafeteros de Colombia(FNC)「Environmental Axis(水資源と精製)」, https://federaciondecafeteros.org/, 取得日 2026-06-21
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