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マキアートとラテ・マキアートは何が違うのか|「垂らす向き」が逆になる

マキアートとラテ・マキアートは何が違うのか|「垂らす向き」が逆になる

マキアート(Caffè Macchiato)とラテ・マキアート(Latte Macchiato)は、エスプレッソとミルクを使う点では同じだが、「何に何を垂らすか」が逆になる。マキアートはエスプレッソにミルクを少量垂らし、ラテ・マキアートはミルクにエスプレッソを注ぐ。この「垂らす向き」の違いは、味の側では苦味・甘味・後味の出方を変え[1]、見た目の側では層の見え方を左右する[2]。同じ名前を持ちながら出てくるものが違うのは、語義の「染み・印」が「どちらに印をつけるか」を意味するためである。

この記事の結論
  • マキアートとラテ・マキアートの違いは、エスプレッソとミルクを垂らす向きが逆になる点に集約される。
  • ミルクを加える時点のコーヒー温度が70℃と低い場合、90℃・80℃より甘味が強く苦味・後味が弱くなる。
  • 垂らす向きに加え、温度条件と泡の安定性という3変数を確かめると、好みの味と見た目の組み合わせが分かりやすくなる。

この記事は「コーヒーの淹れ方は4種類で整理できる|透過・浸漬・加圧・煮出しの原理マップ」の各論です。

目次

同じ名前なのに出てくるものが違う

カフェで「マキアート」を注文したとき、エスプレッソカップに入った濃い一杯が出てくる店と、背の高いグラスに層が見える白っぽい飲み物が出てくる店がある。前者はマキアート(Caffè Macchiato)、後者はラテ・マキアート(Latte Macchiato)だが、どちらも「マキアート」という語を含むため、初めて注文する人は混乱しやすい。

この混乱は、名前の共通部分が「染み・印」という意味を持つイタリア語の “macchiato” に由来し、量や比率ではなく「印をつける」という動作を指すことに起因する。つまり、何に印をつけるかが先に決まり、結果として分量や見た目が変わる構造になっている。

メニューに書かれた名前だけでは判断できない

チェーン店のメニューでは「キャラメルマキアート」のように、ラテ・マキアート系の飲み物を単に「マキアート」と呼ぶことがあり、伝統的なエスプレッソマキアートとは別物になる。また、地域や店の流儀によって、マキアートという語が指す飲み物の実態は揺れる。

この揺れを整理するには、語義と「垂らす向き」という操作の対応を押さえる必要がある。

読み手が知りたいのは「何がどう違うか」

ハンドドリップを淹れる人にとって、エスプレッソベースの飲み物は馴染みが薄い。しかし、ミルクを加える順序や温度が味に与える影響は、ドリップコーヒーにミルクを注ぐ場面でも共通する変数である。マキアートとラテ・マキアートの違いを理解することは、ミルク入りコーヒー全般の味の構造を知る手がかりになる。

語義は「染み・印」

“Macchiato” はイタリア語で「染みをつけた」「印をつけた」を意味する形容詞である。量や比率を表す語ではなく、ある液体に別の液体を少量垂らして「印」を残す動作を指す。

この語義が示すのは、主役となる液体があり、そこへ対照的な色の液体を垂らして視覚的な「染み」を作る、という構図である。

主役が何かで名前が変わる

マキアート(Caffè Macchiato)では、主役はエスプレッソである。エスプレッソに少量のミルク泡を垂らすことで、表面に白い「印」ができる。一方、ラテ・マキアート(Latte Macchiato)では、主役はミルク(latte)である。温めたミルクにエスプレッソを注ぐと、ミルクの白い層にエスプレッソの茶色い「染み」が残る。

どちらも「印をつける」という動作は同じだが、印をつけられる側が逆になる。この対称性が、同じ語を含みながら異なる飲み物を指す理由である。

量の規範は書かれていない

「マキアートはエスプレッソにミルク泡を少量」「ラテ・マキアートはミルクにエスプレッソを1ショット」といった比率の規範を見かけることがあるが、これらの数値は店や地域の慣習であり、統一された規格として確認できる文献は限られる。

分けているのは比率ではなく、「何に何を垂らすか」という操作の向きである。この向きが決まれば、結果として分量の大小も決まる。

マキアート=エスプレッソに印をつける/ラテ・マキアート=ミルクに印をつける

ラテ・マキアートができるまで ラテ・マキアートができるまでを4段で示す。背の高いグラスに温めたミルクと泡を先に入れ、そこへエスプレッソをゆっくり注ぐ。エスプレッソはミルクの中層に沈み、白・茶・白の層を形成する。飲み手が最初に口にするのはミルクの泡である。 Fig. Flow ラテ・マキアートができるまで マキアートとは逆に、ミルクが主役でエスプレッソが「印」として加わる 先に入れる 1 温めたミルクと泡 背の高いグラスに そこへ 2 エスプレッソを注ぐ ゆっくり エスプレッソ 3 中層に沈む ミルクの中層 層 4 白・茶・白の層 最初に口にするのは ミルクの泡 本文「マキアート=エスプレッソに印をつける/ラテ・マキアート=ミルクに印をつける」。注ぐ順を図にした。 当サイトによる整理(本文のこの節の構造を図にしたもの) 図解:coffee-pick.com

マキアートとラテ・マキアートの違いは、次の表で整理できる。

名称主役垂らすもの印の色結果の見た目
マキアート(Caffè Macchiato)エスプレッソミルク泡白濃い茶色に白い泡が浮く
ラテ・マキアート(Latte Macchiato)ミルクエスプレッソ茶白いミルクに茶色い層が入る

この表が示すのは、「垂らす向き」が逆になると、主役と脇役が入れ替わり、色の対比も反転することである。

マキアートの構造

マキアートでは、エスプレッソを抽出したカップに、スプーン1杯程度のミルク泡を載せる。エスプレッソの量はそのまま(通常のエスプレッソと同じ)であり、ミルクは「印」として機能する最小限の量にとどまる。

結果として、飲み手が口にするのはほぼエスプレッソであり、ミルクの甘味と泡の食感がわずかに加わる程度である。

ラテ・マキアートの構造

ラテ・マキアートでは、背の高いグラスに温めたミルクと泡を先に入れ、そこへエスプレッソをゆっくり注ぐ。エスプレッソはミルクの中層に沈み、白・茶・白の3層を形成する。

飲み手が最初に口にするのはミルクの泡であり、その後にエスプレッソの苦味が現れる。マキアートとは逆に、ミルクが主役でエスプレッソが「印」として加わる構造である。

「垂らす向き」が決める2つの変数

垂らす向きが逆になると、変わるものが2つに分かれる。1つは味の側(苦味・甘味・後味の出方)、もう1つは見た目の側(層の見え方)である。これらは独立した変数であり、それぞれ異なる物理化学的な原理で動く。

向きが逆になると、変わるものが2つに分かれる — その1=味の側

コーヒーにミルクを加える温度と順序は、味の知覚に影響を与える。日本家政学会誌に掲載された研究では、ブラックコーヒーの温度を90℃・80℃・70℃の3段階に分け、それぞれに牛乳を添加したときの官能評価を比較している[1]。

70℃で加えると甘味が強く、苦味・後味が弱い

この研究では、70℃で牛乳を添加した試料は、90℃・80℃で添加した試料に比べて甘味が強く、苦味・後味が有意に弱かった[1]。また、飲み込み後に牛乳味が気になる感覚が強く、総合評価では70℃試料が90℃試料よりも好まれた[1]。

重回帰分析の結果、総合評価には牛乳感の強さが影響を与えることが示された[1]。つまり、ミルクを加える時点のコーヒー温度が70℃まで下がっていると、90℃・80℃のときよりミルクの甘味が前に出て、コーヒーの苦味・後味が抑えられた(90℃と80℃は同様のプロファイルだった)。

香気成分の検出量も変わる

GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析)による分析では、70℃試料で検出された香気成分が他の2試料に比べて少ない傾向にあり、2-メチルフラン(2-methylfuran)は80℃・70℃試料で少なく、ピリジン(pyridine)は90℃・80℃試料で多かった[1]。

これは、ミルクを加える時点の温度が、揮発性成分の放出と保持に影響を与えることを示す。70℃試料では香気成分の検出が少なく、味でも甘味が前に出た。

マキアートとラテ・マキアートの味の違い

マキアートでは、抽出直後の高温のエスプレッソに少量のミルクを加えるため、エスプレッソの苦味・後味が強く残る。一方、ラテ・マキアートでは、温めたミルクにエスプレッソを注ぐため、ミルクの甘味が前に出て、エスプレッソの苦味は相対的に穏やかになる。

この違いは、ミルクを加える時点のコーヒー温度と、ミルクとコーヒーの接触面積・混ざり方の違いに起因する。垂らす向きが逆になることで、温度条件と混合の仕方が変わり、結果として味の知覚が変わる。

深掘りメモ|温度と味の関係

上記の研究では、90℃で牛乳を添加すると約15℃、80℃・70℃で添加すると約10℃温度が低下した[1]。この温度変化は、ミルクの初期温度とコーヒーの初期温度の差によって決まる。ただし、この研究が比べたのはブラックコーヒーに牛乳を加える時点の温度であり、温めたミルクにエスプレッソを注ぐラテ・マキアートの条件をそのまま測ったものではない。

その2=見え方の側

ラテ・マキアートで層が見えるかどうかは、泡が保つかどうかの話である。泡の安定を決めているのは、気泡を包む膜の性質のほうである。

泡は膜系として振る舞う

泡は気体粒子の分散系だが、その安定性は泡膜の性質で決まる[2]。泡膜は液体の薄い層であり、表面張力と粘度、膜を構成する分子(タンパク質・脂質・界面活性物質)の性質が、泡の持続時間を左右する。

ミルクの泡は、乳タンパク質(カゼイン・乳清タンパク質)が気泡の界面に吸着し、膜を形成することで安定化する。この膜が強ければ泡は長持ちし、弱ければすぐに消える。

泡の生成と安定性は別の変数

泡の生成(どれだけ細かい泡を作れるか)と、泡の安定性(その泡がどれだけ持つか)は、別の変数で動く[3]。生成にはエネルギー(スチームの圧力・撹拌の速度)と液体の粘度が効き、安定性には膜を構成する分子の種類と濃度が効く。

ラテ・マキアートで層が見えるのは、ミルクの泡が安定して表面に残り、その下にエスプレッソの層が保たれるためである。泡が崩れると、エスプレッソとミルクが混ざり、層は消える。

味と見た目は独立した変数

味の側は、ミルクを加える時点のコーヒー温度と混合の仕方で決まる[1]。見た目の側は、泡を構成する膜の性質で決まる[2][3]。この2つは独立した変数であり、片方を変えてももう片方は動かない。

たとえば、泡が安定していても、ミルクを加える温度が高ければ苦味は強く出る。逆に、温度を下げて甘味を前に出しても、泡が不安定なら層は見えない。マキアートとラテ・マキアートの違いを理解するには、この2つの変数を分けて考える必要がある。

深掘りメモ|泡の膜と味の独立性

泡の安定性を決める膜の性質は、乳タンパク質の種類と温度による変性で変わる。一方、味の知覚を決める温度条件は、ミルクを加える時点のコーヒー温度である。この2つは重なる部分もあるが(温度が高いとタンパク質が変性しやすい)、基本的には別の変数として動く。

3変数のどこにいるか

マキアートとラテ・マキアートの違いは、次の3つの変数で整理できる。

項目内容
垂らす向きエスプレッソにミルクを垂らすか、ミルクにエスプレッソを垂らすか
温度条件ミルクを加える時点のコーヒー温度(70℃で加えると、90℃・80℃より甘味が強く苦味・後味が弱かった)
泡の安定性泡を構成する膜の性質(安定すれば層が見え、不安定なら混ざる)

この3変数の組み合わせで、エスプレッソベースの飲み物は連続的に変化する。

マキアートの位置

マキアートは、エスプレッソにミルク泡を垂らす(垂らす向き=エスプレッソ主役)、抽出直後の高温(温度条件=高い)、泡は少量で安定性は問われない(見た目=層は作らない)、という3変数の組み合わせである。

結果として、エスプレッソの苦味・後味が前に出て、ミルクの甘味は控えめになる。

ラテ・マキアートの位置

ラテ・マキアートは、ミルクにエスプレッソを垂らす(垂らす向き=ミルク主役)、温めたミルク(温度条件=中程度)、泡が安定して層を作る(見た目=層が見える)、という組み合わせである。

結果として、ミルクの甘味が前に出て、エスプレッソの苦味は穏やかになり、視覚的には3層が見える。

他の飲み物との関係

この3変数の軸で見ると、フラットホワイトはマキアートとラテ・マキアートの中間に位置する。エスプレッソにミルクを加える点ではマキアートに近いが、ミルクの量が多く、泡は薄く滑らかである。

また、コルタードはマキアートとラテ・マキアートの中間で、エスプレッソとミルクの比率が1:1に近く、泡は少ない。垂らす向きはマキアートと同じだが、ミルクの量が多いため、甘味と苦味のバランスが異なる。

深掘りメモ|3変数の連続性

エスプレッソベースの飲み物は、3変数の連続的な組み合わせで無数のバリエーションを生む。マキアートとラテ・マキアートは、その両端に位置する典型例である。どちらが「正しい」かではなく、どの変数をどう組み合わせるかで、味と見た目が決まる。

結論

マキアートとラテ・マキアートの違いは、「垂らす向き」が逆になることに集約される。マキアートはエスプレッソに印をつけ、ラテ・マキアートはミルクに印をつける。この向きの違いが、温度条件と泡の安定性という2つの独立した変数を動かし、結果として味と見た目が変わる。

味の側では、ミルクを加える時点のコーヒー温度が70℃だと、90℃・80℃より甘味が前に出て、苦味・後味が抑えられた[1]。見た目の側では、泡を構成する膜の性質が安定性を決め、層が見えるかどうかを左右する[2][3]。この2つは別の変数で動くため、味と見た目を独立して調整できる。

ハンドドリップでコーヒーを淹れる人にとって、この3変数の理解は、ミルク入りコーヒー全般の味の構造を知る手がかりになる。ドリップコーヒーにミルクを注ぐ場面でも、温度と順序が味に与える影響は同じ原理で動く。

エスプレッソベースの飲み物を選ぶときは、「何に印をつけるか」を基準に、自分が求める味と見た目の組み合わせを探すとよい。マキアートとラテ・マキアートは、その両端に位置する典型例である。

参考文献

  1. 牛乳添加時のコーヒー温度の違いが、ミルク入りコーヒーのおいしさに与える影響
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej/70/7/70_416/_article/-char/ja
  2. 膜系としての泡
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jos1956/42/10/42_10_728/_article/-char/ja
  3. 食品における泡の生成と安定性
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/ffij/213/5/213_468/_article/-char/ja

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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