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同じ「ブレンド」なのに、豆は30%・缶の「コーヒー」は51%|2つの規約で基準が違う理由

同じ「ブレンド」なのに、豆は30%・缶の「コーヒー」は51%|2つの規約で基準が違う理由

「○○ブレンドコーヒー」と表示してよい基準は、豆・粉のレギュラーコーヒーでは当該コーヒー生豆を30パーセント以上使用していること[1]、缶・紙パックの飲料では、規約が「コーヒー」と区分するもの(内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で5グラム以上のコーヒー分を含むもの)に限ってこの表示ができ、そのうえで51パーセント以上使用していること[2]と、根拠となる規約ごとに数字が違う。同じ「ブレンド」という言葉なのにパッケージの形態によって適用される規約が異なるためで、棚で見比べると戸惑う読者も多いはずである。この記事では、なぜ数字がずれるのか、そしてその数字が何を保証していないのかを、条文の言い回しに沿って確認する。

この記事の結論
  • 「○○ブレンド」表示の基準は、豆・粉では30パーセント以上、缶・紙パックでは51パーセント以上と規約ごとに異なる。缶・紙パックでこの表示ができるのは、規約上「コーヒー」に区分される飲料(内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で5グラム以上)に限られる。
  • 缶・紙パックは社名や商標を冠したブレンド名なら、51パーセントの規定が適用されない。
  • パッケージを見るときは豆・粉か缶・紙パックかを見分け、○○が産地名か社名かを確かめると判断の分かれ目になる。

この記事は「コーヒー豆を知る完全ガイド|産地・品種・精製・焙煎でわかる味の地図」の各論です。

目次

袋の「モカブレンド」と缶の「モカブレンド」は同じ意味ではない

棚に並ぶ二つの「ブレンド」

コーヒー豆の売り場で「モカブレンド」と書かれた袋を手に取り、後日、自動販売機で「モカブレンド」と書かれた缶コーヒーを買う。どちらも表示上は同じ語で、産地の名を冠した「ブレンド」という体裁も同じである。しかし表示の裏にある数字の基準はそもそも別物で、片方は30パーセント以上、もう片方は51パーセント以上という、まったく異なる下限値の上に成り立っている[1][2]。ラベルの文言だけを比べても、この差は見えてこない。

同じ語なのに根拠が違う

「ブレンド」という言葉自体には法律上の一義的な数字は無く、表示のルールを定めているのはコーヒー業界の公正競争規約である。公正競争規約は景品表示法にもとづき事業者団体が自主的に定める表示ルールで[3]、食品関係だけでも複数の規約が並行して存在する[4]。レギュラーコーヒー・インスタントコーヒーの表示に関する規約と、コーヒー飲料等の表示に関する規約は、名称が似ていても別々に制定された規約であり、それぞれが自分の対象とする商品群にだけ数字を定めている[1][2]。

豆・粉の側の基準——レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約

単独名は「それ以外を使用してはならない」が前提

豆や粉のレギュラーコーヒーを対象にする規約では、まず単独名の表示について定めがある。「特定のコーヒー生豆の産地、品種、銘柄等のみを使用している旨表示しようとする場合には、当該コーヒー生豆以外を使用してはならない」というのがその条文である[1]。つまり「ブルーマウンテン」と単独名で書くなら、他の産地の生豆を混ぜてはいけないという禁止規定が先に置かれている。この前提を踏まえたうえで、混合を認める「ブレンド」表示の条文が続く構造になっている。

「30パーセント以上使用しているものに限り」の意味

「ブレンド」表示についての条文は次のとおりである。「『○○○ブレンド』(『○○○』は、コーヒー生豆の産地、品種、銘柄等をいう。)と表示する場合は、当該コーヒー生豆を30パーセント以上使用しているものに限り表示することができる」[1]。ここで書かれているのは「30パーセント入っている」という説明ではなく、「30パーセント以上使用しているものに限り、その表示をしてよい」という許可の条件である。表示できるかどうかの資格を定めた条文であって、配合そのものの説明書きではない。

30%は下限であり、配合の実態を語らない

この条文が定めているのは下限値だけで、上限には触れていない。実際の配合が下限すれすれでも、大半を占めていても、30パーセント以上という条件を満たしていれば「モカブレンド」と表示できる。逆に言えば、表示だけを見て実際の配合比率を数字として読み取ることはできない。何パーセント使われているかを知りたい場合、パッケージの表示義務の外側にある情報になる。

深掘りメモ|30%規定の射程

この条文は「表示してよい下限」を定めるものであり、実際の配合比率の開示義務までは規定していない。30パーセント以上という条件さえ満たせば、それより高い比率で使っていても、規約上はその実数を表示する義務は生じない構造である。

缶・紙パックの側の基準——コーヒー飲料等の公正競争規約

単独名は100パーセント、ブレンド名は51パーセント以上

缶コーヒーや紙パックのコーヒー飲料を対象にする規約は、豆・粉の規約とは別に制定されている。その施行規則は、特定の種類のコーヒーを使用している旨の表示は「規約第2条第1項第1号に規定する『コーヒー』にのみ表示できるものとし」ている[2]。規約上の「コーヒー」とは内容量100グラム中にコーヒー生豆換算で5グラム以上のコーヒー分を含むものをいい、2.5グラム以上5グラム未満の「コーヒー飲料」などに区分されるものには、この表示自体ができない[2]。そのうえで、単独の産地・種類の名称を冠する場合はそのコーヒー豆を100パーセント使用するものとされ、一方「ブレンド」名で特定の種類を示す場合には、次のように定められている。「2種類以上のコーヒー豆を混合したものであって、そのうち特定の種類のコーヒー豆を使用している旨を表示する場合(『○○ブレンドコーヒー』、『○○ブレンド』又は『○○入りコーヒー』等(『○○』にはコーヒー豆の種類))は、当該種類のコーヒー豆を51パーセント以上使用するものとする」[2]。豆・粉の30パーセントに比べると、下限そのものが高い。

社名・商標を冠したものはこの限りでない

この51パーセントの規定には除き書きが付いている。「特定の種類のコーヒー豆を示しているのではなく、『○○ブレンドコーヒー(○○には社名又は商標等)』等の社名又は商標等を冠したものにあってはこの限りではない」[2]。つまり○○の部分が産地や品種の名前ではなく、企業名や商標である場合には、51パーセントという下限そのものが適用対象から外れる。○○に入っている語が地名・品種名なのか、社名・商標なのかによって、そもそも規定の当てはめが変わる。

なぜ数字が違うのか——別の規約が別の商品群を見ている

適用対象が違う二つの規約

30パーセントと51パーセントという数字の差は、どちらかが甘い・厳しいという優劣の話ではない。密封された豆・粉を対象にする規約と、密封された飲料そのものを対象にする規約は、そもそも別の商品群を見ている別の規約である[1][2]。豆・粉の規約は焙煎前後の生豆の配合を対象にし、飲料の規約は既に抽出・調合された液体としてのコーヒー飲料を対象にする。対象となる製造工程も流通のかたちも異なるため、それぞれの規約が独立に下限値を定めても矛盾は生じない。

103の規約という枠組みの中の二つ

公正競争規約は業種ごとに数多く存在し、消費者庁がまとめた一覧では、表示に関する規約と景品に関する規約を合わせて103規約が設定されている(食品関係36規約を含む表示関係66規約、食品関係11規約を含む景品関係37規約)[4]。この食品一般36規約の中に「コーヒー飲料等」と「レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒー」がそれぞれ別項目として並んでおり[4]、両者が最初から別の規約として制定されていることが分かる。数字の違いは、この制度上の切り分けをそのまま反映したものである。

以下は、両規約の基準を整理したものである。

適用対象単独名の基準ブレンド名の基準除き書き
レギュラーコーヒー・インスタントコーヒー(豆・粉)当該コーヒー生豆以外を使用してはならない[1]当該コーヒー生豆を30パーセント以上使用しているものに限り表示できる[1]規定は確認できない
コーヒー飲料等(缶・紙パック。表示できるのは規約上の「コーヒー」のみ)100パーセント使用するものとされる[2]当該種類のコーヒー豆を51パーセント以上使用するもの[2]社名・商標を冠したものはこの限りでない[2]

「○○」に入れてよい語も決まっている

別表2が定める産地・品種・銘柄の範囲

豆・粉の規約では、「○○ブレンド」の○○に入れられる産地・品種・銘柄についても、別表2で区分と範囲が例示されている[1]。列挙されている名称には次のようなものがある。

  • ブルーマウンテン、ハイマウンテン、ジャマイカ、クリスタルマウンテン、グアテマラアンティグア[1]
  • トラジャ、カロシ、ガヨマウンテン、マンデリン、ハワイコナ[1]

これらは産地や地域が生産地区の範囲まで定義されたうえで例示されている名称であり、施行規則は産地・品種・銘柄等について「別表2に定めるとおりとする」としている[1]。ただし別表2の題は「産地、品種、銘柄の区分及び範囲の例示」で、○○に入れてよい語を限って並べた一覧ではない[1]。

産地の価値そのものは別の論点

別表2に列挙された銘柄それぞれの産地としての価値や特徴を掘り下げることは、この記事の範囲を超える。ブルーマウンテンという名称が持つ産地としての背景と、30パーセントという基準がその価値をどう規定しているかは、ブルーマウンテンを取り上げた記事で扱われている論点である。別表2に定められた銘柄の一覧そのものをどこまで細かく確認するかは、銘柄の範囲を専門に扱う記事に委ねたい。

この数字が保証していないこと(結論)

ブレンド表示を読む順番 「○○ブレンド」表示に出会ったときの確認の順番を3段で示す。豆・粉か缶・紙パックの飲料かで規約と下限値が変わり、○○が産地・品種・銘柄か社名・商標かで適用除外が変わる。表示は下限の条件で、実際の配合比率ではない。 Fig. Flow ブレンド表示を読む順番 豆・粉30%/缶の「コーヒー」区分51%はどちらも下限 形態 1 下限値が変わる 豆・粉なのか 缶・紙パックか ○○の語 2 適用除外が変わる 産地・品種・銘柄か 社名・商標か 数字の意味 3 下限の条件 実際の配合比率 そのものではない 本文「この数字が保証していないこと(結論)」。表示名だけで配合は判断できない。 出典: レギュラーコーヒー等の表示に関する公正競争規約/コーヒー飲料等の同規約 図解:coffee-pick.com

下限であって主役の証明ではない

豆・粉の30パーセントも、飲料の51パーセントも、どちらも「その名前を表示してよい下限」を定めた条件であって、その産地・品種が風味の主役であることや、品質の高さを保証する数字ではない[1][2]。30パーセント以上使っていれば「モカブレンド」と表示できるという条件は、残りがどのような生豆であるかについて何も語らない。表示名だけで配合の全体像を判断することはできない。

表示を読むときの順番

パッケージの「○○ブレンド」という表示に出会ったとき、確認する順番を整理すると次のようになる。

  • まず豆・粉なのか、缶・紙パックの飲料なのかを見分ける(適用される規約と下限値が変わる)
  • ○○の部分が産地・品種・銘柄なのか、社名・商標なのかを見分ける(缶・紙パックでは適用除外の対象が変わる)
  • 表示されているのは下限の条件であり、実際の配合比率そのものではないと理解する

この三点を押さえておけば、袋のブレンドと缶のブレンドを同じ基準で比べてしまう誤りは避けられる。数字の大小そのものに優劣の意味を読み込まず、それぞれの規約が何を対象にしているかを確認する読み方のほうが、表示を実用的に使う近道である。次に手に取ったブレンド表示のパッケージで、まずどちらの商品群に属するかを確かめてみてほしい。「○○」に入れてよい産地名・銘柄名そのものの範囲は別表2 が決めており、その一覧はコーヒーの銘柄名は「どこで採れたか」で決まっているにまとめた。

参考文献

  1. レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約及び同施行規則(令和6年10月1日施行)
    https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/b05_H_coffee.pdf
  2. コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約及び同施行規則
    https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/b03_H_cancoffee.pdf
  3. 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)/e-Gov法令検索
    https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134
  4. 消費者庁「公正競争規約が設定されている業種」
    https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/fair_competition_code/industries/

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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