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喫茶店のコーヒー1杯は、1962年から2025年でいくらになったか|東京都区部の年表と、途中で書き換えられた「1杯」の決まり

喫茶店のコーヒー1杯は、1962年から2025年でいくらになったか|東京都区部の年表と、途中で書き換えられた「1杯」の決まり

統計の値段は、決めた条件の「1杯」を毎月追い続けた記録であり、条件が書き換えられれば同じ線の上でも別の1杯の値段になる。東京都区部の喫茶店のコーヒー1杯は2025年の年平均613円で、月ごとには1月599円から12月620円まで動いた[1]。

年表の値段の線と、途中で変わったもの 東京都区部の喫茶店のコーヒーの年表の読み方を、年の古い順に並べた図。値段の線は一本で続いているが、その途中で、調べる一杯の決まりである基本銘柄が書き換えられ、値段に含まれる消費税の制度も変わっている。基本銘柄は、トースト等のサービスを除くという書き方がなくなり、次にセルフサービス店及びコーヒースタンドを除く・アイスコーヒーは除くが入り、次に品目名がコーヒー(外食)になり、最後に持ち帰りは除くが追加された。消費税は税率の引上げがあり、持ち帰りは除くが追加されたのと同じ月に、税率の引上げと軽減税率の導入があった。言えるのは時期が重なっているという所までである。 Fig. Table 年表の値段の線と、途中で変わったもの 条件が書き換えられれば、同じ線の上でも別の一杯の値段になる 節目の前後の差が値段の変化か条件の変化かは、数字だけでは切り分けられない 値段の線と節目 基本銘柄(調べる一杯の決まり) 値段に含まれる消費税 年表の始まり 喫茶店におけるコーヒー代 (トースト等のサービスを除く) 銘柄の書き換え 「トースト等のサービスを除く」がなくなり 「喫茶店におけるコーヒー代」に 銘柄の書き換え 「セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く」 「アイスコーヒーは除く」が入る 税率の引上げ 消費税率の引上げ 銘柄の書き換え 品目名が「コーヒー(外食)」に 銘柄の「コーヒー代」が「コーヒー」に 銘柄の書き換えと 税の制度の変更 末尾に「持ち帰りは除く」を追加 消費税率の引上げ 軽減税率の導入(外食は対象外) 同じ月。言えるのは時期が重なっているという所まで いまの年表 同じ品目名でも、条件は途中で書き換えられている 消費税込みの価格を調べている 並びは年の古い順。東京都区部・年平均の値。年と金額は本文の表を参照 当サイトによる整理(本文の構造を図にしたもの) 図解:coffee-pick.com
目次

喫茶店のコーヒー1杯とは何の値段か

基本銘柄という条件

小売物価統計調査では、品目ごとに統計局長が一定の銘柄を指定して価格を調べており、これを「基本銘柄」と呼ぶ[3]。総務省統計局の説明によれば、基本銘柄は「品目ごとに品質,性能,特性(特徴)を規定し,規定された商品を一定して,かつ全国で調査できるように設定」されている[3]。これを誤ると、「価格が値上げ・値下げによって変動したのか,調査した銘柄が異なるために変動したのか分からなくなってしまいます」とも説明されている[3]。つまり同じ「コーヒー1杯」という品目名であっても、何を1杯と数えるかという条件そのものが、統計の設計段階で厳密に定められている。この条件が変わらない限り、価格の上下は純粋な値段の変化として読むことができる。

この記事の年表が追う「1杯」

本記事が示す東京都区部の年表も、この基本銘柄の考え方にもとづいて決められた1杯の値段を追ったものである。調査の対象は喫茶店で提供されるコーヒーであり、セルフサービス店で提供されるコーヒーは、別の銘柄(銘柄符号2165)として調べられている[2]。年表の数字を読むときは、そこに「どの1杯か」という条件が常に貼りついていることを前提にする必要がある。条件が途中で書き換えられた場合、見た目は同じ折れ線の上にあっても、実際には別の1杯の値段を並べていることになる。

深掘りメモ|基本銘柄という発想

小売物価統計調査が品質や特徴を規定した基本銘柄を使うのは、銘柄の違いによる価格差と、純粋な値上げ・値下げによる価格差を区別するためである[3]。この発想を知らずに古い値段と今の値段をそのまま比べると、条件の違いを値動きと取り違えやすくなる。

東京都区部の年表(1962年~2025年)

【表1:喫茶店のコーヒー1杯の年表(東京都区部)】

以下の表は、東京都区部における喫茶店のコーヒー1杯の価格を、1962年から2025年まで年の古い順に並べたものである。

年喫茶店のコーヒー1杯(円・年平均)基本銘柄(調べる1杯の決まり)の改正
196262.1
196365.6
196468.7
196571.5
196676.5
196777.6
196883.0
196988
197095
1971106
1972115
1973133
1974167
1975194
1976210
1977229
1978235
1979238
1980247
1981258
1982264
1983274
1984276
1985280
1986289
1987302
1988308
1989327
1990351
1991370
1992390
1993397
1994399
1995399
1996400
1997410
1998412
1999419
2000418この年(平成12年)までの基本銘柄は「喫茶店におけるコーヒー代(トースト等のサービスを除く)」。その後は「喫茶店におけるコーヒー代」
2001426
2002433
2003434
2004439
2005445
2006433
2007412
2008414
2009420
2010411
2011418
2012419
20134131月に基本銘柄を改正:「喫茶店におけるコーヒー代」→「喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー代,アイスコーヒーは除く」
2014414
2015422
20164331月に改正:品目名「コーヒー」→「コーヒー(外食)」、基本銘柄の「コーヒー代」→「コーヒー」
2017450
2018479
201950510月に改正:基本銘柄の末尾に「,持ち帰りは除く」を追加
2020512
2021513
2022520
2023547
2024571
2025613

出典:1962〜1999年は総務省統計局「主要品目の東京都区部小売価格(昭和25年~平成22年)」(小売物価統計調査(動向編)の長期系列。銘柄符号2162「コーヒー(喫茶店におけるコーヒー代)」の列)。2000〜2025年は総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)」調査品目の年平均価格(e-Stat 統計表ID 0003420453・銘柄符号2162。2025年の値は結果表 第1表【14】[1]と同じ)。基本銘柄の改正は、2000年の欄が長期系列の「品目名及び銘柄等の変遷」、2013年・2016年・2019年の欄が基本銘柄の新旧対照表[2]による。取得日はいずれも2026-10-13。

注:長期系列の原本には「小売価格は各年次の「銘柄(内容)」及び「単位」により集計したもの。」という注記がある。同じ表の1950〜1961年の欄は「…」で、値が載っていない。1962〜1968年は原本が小数まで載せている。2000年以前の基本銘柄の改正は、原本に月の記載が無い。

表の読み方

表の数字はいずれも年平均の値であり、月ごとの変動をならした1年分の代表値である。対象は東京都区部に限られており、全国の平均や日本全体の相場を示す値ではない。価格は定価や正札ではなく、実際に消費者が支払う消費税込みの金額として記録されている[5]。値が存在するのは1962年から2025年までの期間であり、それより前やそれより後の年については、この表では確認できない。

表の右の列には、基本銘柄が改められた年(2013年・2016年・2019年)と、2000年までの基本銘柄を節目として示した。その前後で数字の動きが見える場合でも、それが値段そのものの変化なのか、調べる1杯の条件が変わったことによる見え方の違いなのかを、節目の有無とあわせて確認する必要がある。同じ結果表には、東京都区部のほか八王子市や立川市など複数の市の価格も月ごとに示されており、喫茶店のコーヒーという品目が地域ごとに調べられていることが分かる[1]。

深掘りメモ|年表の読み合わせ方

年表の中で前年より数字が下がって見える年があっても、その年に基本銘柄が改められていれば、その差が値下がりなのか、調べる1杯の条件が変わったことによる差なのかは、表の数字だけでは切り分けられない。表1では2013年がこれにあたり、前年の419円から413円になった同じ年の1月に基本銘柄が改められている。

「1杯」の決まりはどう書き換えられたか

基本銘柄の新旧対照表に見る変更

総務省統計局が公開している基本銘柄の新旧対照表(2001年~2026年)によると、喫茶店のコーヒー(銘柄符号2162)の基本銘柄は、2013年1月、2016年1月、2019年10月に改められている[2]。2013年1月には「喫茶店におけるコーヒー代」が「喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー代,アイスコーヒーは除く」に、2016年1月には品目名が「コーヒー」から「コーヒー(外食)」に、銘柄の「コーヒー代」が「コーヒー」に改められた[2]。2019年10月の改正では、旧い規定で「喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー,アイスコーヒーは除く」とされていたのに対し、新しい規定では「喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー,アイスコーヒーは除く,持ち帰りは除く」に改められている[2]。この対照表から言えるのは、「持ち帰りは除く」という文言が付け加えられたということまでである。それ以前の調査で持ち帰りのコーヒーがどのように扱われていたかは、この対照表だけからは分からない。

区分コーヒー(外食)の基本銘柄(2019年10月の改正)
旧喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー,アイスコーヒーは除く
新喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー,アイスコーヒーは除く,持ち帰りは除く

出典:小売物価統計調査(動向編)基本銘柄の新旧対照表[2]

外食の他の品目にも共通する変更

同じ2019年10月の改正では、うどん(外食)、カレーライス(外食)、サンドイッチ(外食)など、外食のほかの品目の基本銘柄にも「持ち帰りは除く」という文言が加えられている[2]。喫茶店のコーヒーだけに起きた変更ではない。ただし、その見直しの理由そのものは、この対照表には記されていない。表に書かれているのは規定の文言の変化であって、その背景にある判断の理由ではない点に注意が要る。

年表の値段には消費税が含まれている

消費税込みの価格を調べる仕組み

総務省統計局「小売物価統計調査のはなし」によれば、小売物価統計調査で調べる価格は、商品やサービスの定価や正札の価格ではなく、「調査店舗で実際に消費者に販売している消費税込みの価格」である[5]。つまり年表に並ぶ喫茶店のコーヒー1杯の値段も、税抜きの建値ではなく、実際に支払う税込みの金額として記録されている。この点は、昔の値段を今の感覚と比べるときに見落としやすい。同じ金額でも、含まれている税率が違えば、税を除いた金額は同じではない。

税率が変わった時期

財務省の資料によれば、消費税率は平成26年4月1日に5%から8%へ、令和元年10月1日に8%から10%へと引き上げられている[6]。令和元年10月1日からは、酒類・外食を除く飲食料品と、週2回以上発行される新聞の定期購読契約を対象とする軽減税率(8%)もあわせて設けられた[6]。外食はこの軽減税率の対象から外れている[6]。喫茶店のコーヒーの基本銘柄に「持ち帰りは除く」が足された2019年10月は、この制度が始まった月と同じである[2][6]。言えるのは時期が重なっているという所までで、税の制度の変更が基本銘柄を改めた理由だったかどうかは、新旧対照表には書かれていない。

  • 平成26年4月1日:消費税率5%→8%[6]
  • 令和元年10月1日:消費税率8%→10%、軽減税率8%の導入[6]

ここに挙げたのは財務省のこの資料が示す引上げで、年表の期間(1962〜2025年)の税率の変更をすべて数え上げたものではない。年表の金額に含まれる税の率は期間の途中で変わっている、という点が、年表を読むときの注意になる。

物価指数で見るコーヒー(外食)

2020年基準の指数とは

総務省統計局の消費者物価指数(2020年基準)の2025年平均では、品目「コーヒー(外食)A」が115.3、「コーヒー(外食)B」が121.5となっている(いずれも2020年を100とした指数)[4]。指数は、基準とする年の水準を100として、そこからどれだけ変化したかを示す相対的な値である。基準の年が異なれば、同じ年の実際の値段であっても指数の数字は変わるため、「2020年基準」という条件を外して数字だけを比べることはできない。

円の値段と指数の違い

115.3や121.5という数字は、円建ての値段そのものではなく、2020年の水準を100とした場合の相対的な位置を示す値である。年表に並ぶ613円のような金額と、消費者物価指数の115.3という数字は、同じコーヒーという対象を扱っていても、性質の異なる二つの数字である。前者は実際に支払う金額を表し、後者はある年を基準にした変化の度合いを表している。品目名に「A」「B」という区分があるとおり、外食のコーヒーの指数は一つではなく、2つの品目に分けて作られている[4]。

深掘りメモ|AとBの違い

消費者物価指数では「コーヒー(外食)A」と「コーヒー(外食)B」が別の品目として載っており、2025年平均の指数(2020年基準)はそれぞれ115.3と121.5で一致していない[4]。同じ外食のコーヒーでも、品目によって指数の水準には差がある。

結論|年表を読むときの注意点と、次にできること

年表を読むときの四つの注意

東京都区部の年表を引用するときは、次の四点を踏まえておく必要がある。

  • 東京都区部の値であり、全国の平均を示す値ではない
  • 同じ品目名であっても、調べる1杯の条件(基本銘柄)は途中で書き換えられている
  • 価格は定価ではなく、消費者が実際に支払う消費税込みの値として調べられている
  • 喫茶店の1杯を対象とした値であり、セルフサービス店のコーヒーは別の銘柄として調べられている

読者が次にできること

昔の喫茶店の値段を引用するときは、年・地域(東京都区部かどうか)・統計名をあわせて示すことで、何の1杯を指しているのかが伝わりやすくなる。小売物価統計調査の結果は総務省統計局のサイトとe-Statで公開されており、東京都区部に限らず他の都市の最近の値段も同じ統計から確認できる[1]。2020年以降に、輸入や出荷、店頭、喫茶店の値段がそれぞれどう動いたかを段階ごとに比べた内容は関連する記事で扱っている。家計の支出や喫茶店の軒数の推移については関連する記事、喫茶店という場そのものの歴史については関連する記事で確認できる。

参考文献

  1. 小売物価統計調査(動向編)2025年 結果表 第1表 調査品目の月別価格及び年平均価格【都道府県庁所在市及び人口15万以上の市】【14】「2135 ハンバーガー(外食)」~「2183 学校給食」/総務省統計局
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040446325
  2. 小売物価統計調査(動向編)基本銘柄の新旧対照表 2001年~2026年/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/zuhyou/shinkyu.xlsx
  3. 小売物価統計調査に関するQ&A(回答)11 基本銘柄とはどのようなものですか?/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/qa-1.html
  4. 消費者物価指数 2020年基準 年報 2025年 第5-1表 品目別価格指数・寄与度(全国)/総務省統計局
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040430838
  5. 小売物価統計調査のはなし(2026年版)/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kouri/handbook/pdf/hanashi_2026.pdf
  6. 消費税率の引上げと使途の明確化(税制抜本改革)/財務省
    https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/d05_1.pdf

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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