コーヒーの関税は、いっていない生豆であれば無税だが、いった豆(焙煎豆)とインスタントコーヒーには税率があり、どの税率が当たるかは原産国によって変わる[1][2][3]。出発点になる基本税率は、①生豆(0901.11・0901.12)が無税、②焙煎豆(0901.21・0901.22)が20%、③インスタントコーヒーが12.3%である[1][2][3]。読み方を知っておけば、品目番号と原産国を実行関税率表に当てはめて自分で確かめられる。
- コーヒーの関税は、生豆なら基本税率が無税で、焙煎豆とインスタントコーヒーには税率がある。
- 基本税率は焙煎豆(0901.21・0901.22)が20%、インスタントコーヒーが12.3%である。
- 実際に当たる欄は原産国によって分かれ、実行関税率表の空欄は0%でも無税でもない。
法律の定め:関税定率法と基本税率
関税定率法第3条と別表
関税定率法第3条は、関税は輸入貨物の価格又は数量を課税標準として課し、「その税率は、別表による」と定めている[3]。この別表(関税率表)は品目ごとに番号を振り、番号ごとに税率を示す構成になっている。コーヒーは第09.01項、インスタントコーヒーを含む調製品は第21.01項に収められている[2][3]。番号の末尾の数字まで見ないと、同じ「コーヒー」でも税率が違う理由がわからない。
第09.01項──生豆と焙煎豆
別表の第09.01項は、コーヒー(いったものを除く。)のうち0901.11(カフェインを除いてないもの)と0901.12(カフェインを除いたもの)をいずれも無税と定めている[3]。一方、コーヒー(いったものに限る。)の0901.21と0901.22は、いずれも基本税率20%である[3]。つまり同じ豆でも、いっているかどうかで、基本税率は無税と20%に分かれる[3]。コーヒー豆の殻及び皮(0901.90の1)も無税とされている[3]。
第21.01項──インスタントコーヒーとエキス類
別表の第21.01項は、コーヒーのエキス、エッセンス及び濃縮物(2101.11)のうち砂糖を加えたものを24%、その他のもののうちインスタントコーヒーを12.3%、その他のものを16%としている[3]。税関の実行関税率表の基本税率の欄も同じ値である[2]。インスタントコーヒーの基本税率12.3%は、焙煎豆の20%より低い。ここまでは基本税率の話で、実際にどの税率が当たるかはこのあと原産国ごとに分かれる。
関税定率法の別表は、0901のあとの2桁で、いったかどうか(0901.1x=いったものを除く、0901.2x=いったものに限る)とカフェインを除いたかどうか(末尾の1と2)を分けている[3]。09.01項の中だけで無税(生豆)と20%(焙煎豆)が並んでおり、品目番号を確認せずに「コーヒー」とひとまとめにすると税率を読み違える。
実行関税率表(2026年8月8日版)で確認する税率
表の見方と「参考」の注記
税関が公開する実行関税率表は、基本税率のほかにWTO協定税率、特恵税率、特別特恵税率、各経済連携協定の税率を品目番号ごとに並べた表である[1][2]。2026年8月8日版の第9類(コーヒー等)と第21類(調製食料品)を見ると、生豆・焙煎豆・インスタントコーヒーで欄の埋まり方が異なる。税関はこの版の目次ページで、掲載している実行関税率表はあくまで参考として利用し、実際の輸入手続きで不明な点は各税関の税関相談官に問い合わせるよう案内している。版が更新されると数値が変わることもあるため、参照する際は日付入りの版を確認する必要がある。
表1──生豆・焙煎豆・インスタントコーヒーの税率
表1 基本・WTO協定・特恵・特別特恵の欄(実行関税率表 2026年8月8日版)
| 品目 | 基本税率 | WTO協定税率 | 特恵税率 | 特別特恵税率 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| ①生豆(0901.11/0901.12) | 無税 | (無税) | (空欄) | (空欄) | [1] |
| ②焙煎豆(0901.21) | 20% | 12% | 10% | 無税 | [1] |
| ③インスタントコーヒー(2101.11の(1)) | 12.3% | 8.8% | (空欄) | 無税 | [2] |
生豆の行は基本税率が無税で、WTO協定税率の欄には括弧つきで「(無税)」と書かれ、特恵税率と特別特恵税率の欄は空欄である[1]。焙煎豆は基本税率20%、WTO協定税率12%、特恵税率10%、特別特恵税率は無税と段階がある[1]。カフェインを除いた焙煎豆(0901.22)も、この4つの欄は0901.21と同じである[1]。インスタントコーヒーは特恵税率の欄が空欄になっており、この空欄が後の章で読み方を分ける要因になる[2]。
経済連携協定の欄を読む
焙煎豆(0901.21)の経済連携協定欄
実行関税率表の経済連携協定(EPA)の欄を見ると、焙煎豆(0901.21)はメキシコ・フィリピン・スイス・ベトナム・ペルー・豪州・モンゴル・CPTPP・EU・英国・日米貿易協定の欄がいずれも無税である[1]。一方、アセアンの欄は12%、RCEP(アセアン・豪州・ニュージーランド)とRCEP(中国)の欄はいずれも7.5%とされている[1]。シンガポール・マレーシア・チリ・タイ・インドネシア・ブルネイ・インド・RCEP(韓国)の欄は空欄である[1]。カフェインを除いた焙煎豆(0901.22)はアセアンの欄が10%で、ほかの欄は0901.21と同じである[1]。
インスタントコーヒーの経済連携協定欄
インスタントコーヒーは、シンガポールから英国までの各欄と日米貿易協定の欄がいずれも無税になっている[2]。RCEP(アセアン・豪州・ニュージーランド)とRCEP(中国)の欄はいずれも5.5%で、RCEP(韓国)の欄は空欄である[2]。焙煎豆と比べると、無税と書かれた欄が多い。
空欄の意味
表1・表2に出てくる空欄は、税率が書かれていない欄であり、0%でも無税でもない。税関の「税率決定までの流れ」は、EPA税率が設定されていない品目について、一般特恵やWTO協定の税率を確かめる手順へ進むとしている[5]。生豆(0901.11・0901.12)についても注意が必要で、シンガポールからRCEP(韓国)までの経済連携協定の欄はいずれも無税だが、日米貿易協定の欄は空欄になっている[1]。生豆は基本税率そのものが無税だが[1][3]、「すべての協定で無税」とひとまとめにはできない。
表2 経済連携協定の欄(実行関税率表 2026年8月8日版)
| 協定・相手国等 | ②焙煎豆(0901.21) | ③インスタントコーヒー | 出典 |
|---|---|---|---|
| メキシコ・フィリピン・スイス・ベトナム・ペルー・豪州・モンゴル・CPTPP・EU・英国・日米貿易協定 | 無税 | 無税 | [1][2] |
| シンガポール・マレーシア・チリ・タイ・インドネシア・ブルネイ・インド | 空欄 | 無税 | [1][2] |
| アセアン | 12% | 無税 | [1][2] |
| RCEP(アセアン・豪州・ニュージーランド) | 7.5% | 5.5% | [1][2] |
| RCEP(中国) | 7.5% | 5.5% | [1][2] |
| RCEP(韓国) | 空欄 | 空欄 | [1][2] |
どの欄が当たるかの決まり方
税率決定までの4つの確認
税関が示す「税率決定までの流れ」によれば、どの欄を適用するかは原産地について次の順で確認する[5]。
- 原産地が後発開発途上国(LDC)かどうか
- 原産地が経済連携協定(EPA)の締約国かどうか
- 原産地が一般特恵対象国かどうか
- 原産地がWTO加盟国かどうか
この順序を踏まえたうえで、経済連携協定の税率と一般特恵税率の両方が設定されている品目では、さらに比較のルールが入る。
一般特恵税率とEPA税率、どちらが優先か
原産地が経済連携協定の締約国で、EPA税率が設定されている一般特恵対象品目については、一般特恵税率がEPA税率以上である品目はEPA税率を適用し、それ以外の品目は一般特恵税率を適用する(シーリング管理対象品目は枠内の輸入に限る)とされている[5]。2つの税率を比べ、低いほう(同じならEPA税率)の欄を読む手順である。一般特恵対象国以外の場合、後発開発途上国の場合、国別・品目別特恵適用除外措置の対象の場合は、この比較ではなく「その他の品目」の手順へ進む[5]。
特恵原産地証明書という条件
特恵税率・特別特恵税率の適用には、原則として特恵原産地証明書の提出が必要になる[5]。EPA税率を適用するためには、その協定の原産地証明書の提出が必要である[5]。原産国が特恵適用国・地域一覧に載っているかどうかだけでは、どの欄が当たるかは決まらない。
「一般特恵税率≧EPA税率である品目→EPA税率を適用」という行は、品目ごとに2つの税率を比べる手順である[5]。焙煎豆(0901.21)は特恵税率の欄が10%、ベトナムの欄が無税なので、この手順ではEPA税率の欄を読むことになる[1][5]。品目と原産国の組み合わせごとに確認する必要がある。
主な相手国に当てはめて読む
エチオピア産・コロンビア産・グアテマラ産・ベトナム産の焙煎豆
税関の「特恵適用国・地域一覧」(令和8年4月1日現在)には、コロンビア、グアテマラ、ベトナム、エチオピアが載っている[6]。このうちエチオピアには特別特恵受益国を示す印が付いている[6]。この一覧に沿って読むと、エチオピア産の焙煎豆は特別特恵の欄(無税)が読む場所になり、コロンビア産・グアテマラ産の焙煎豆は特恵の欄(10%)、ベトナム産は経済連携協定の欄が読む場所になる[1][5][6]。ここで言えるのは「読む欄」であって、実際にかかる税額の断定ではない。特恵・経済連携協定の欄は、原産地規則を満たし証明書を提出した場合に当たる欄であり、国別・品目別の特恵適用除外がありうるため、個々の輸入でこの税率が確実に当たるとは言えない。
インスタントコーヒーの場合
インスタントコーヒーは特恵税率の欄が空欄になっているため、コロンビア産・グアテマラ産のインスタントコーヒーは特恵の欄を読めない[2][6]。税関の手順では、原産地がWTO加盟国などに当たる場合、基本税率が協定税率より高い品目には協定税率を適用するので[5]、読む場所はWTO協定税率8.8%の欄になる[2]。ベトナムのように経済連携協定の欄がある相手国・地域は、焙煎豆と同様にその欄を読むことになる[2]。このようにインスタントコーヒーと焙煎豆では、同じ原産国でも読む欄の種類が変わる場合がある。インスタントコーヒーの製造工程そのものについては、インスタントコーヒーの製造工程を解説した記事で扱われている。
「無税」は一度に決まった話ではない
焙煎豆やインスタントコーヒーの欄が無税になっている相手国・地域は、どれも同じタイミングで無税になったわけではない。農林水産省の「経済連携交渉等の状況について(2026年7月)」によると、日ベトナムEPA(2008年12月署名・2009年10月発効)は煎ったコーヒーを15年間で段階的に関税を撤廃する品目に挙げている[4]。日スイスEPAでは煎ったコーヒーが3年間での段階的撤廃、インスタントコーヒーは即時撤廃の品目とされた[4]。日豪EPAでは焙煎コーヒーが3年間での段階的撤廃の品目として挙げられている[4]。現在の実行関税率表で無税と並んでいる欄の背後には、協定ごとに異なる撤廃の経緯がある。
結論
コーヒーの関税は、生豆(0901.11・0901.12)なら基本税率が無税、焙煎豆(0901.21)なら基本税率20%、インスタントコーヒー(2101.11の(1))なら基本税率12.3%というのが出発点であり、実際にどの欄が当たるかは原産国によって分かれる[1][2][3]。原産地が後発開発途上国か、経済連携協定の締約国か、一般特恵対象国か、WTO加盟国かという順に確認し、特恵税率・特別特恵税率を使う場合は原則として特恵原産地証明書の提出が、EPA税率を使う場合はその協定の原産地証明書の提出が条件になる[5]。エチオピア産やベトナム産のように一覧に載っている原産地であっても、「読む欄」が無税や低い税率であることと、個々の輸入で確実にその税率になることは別の話であり、国別・品目別の除外がありうる点は変わらない[6]。実行関税率表は税関のサイトで版ごとに公開されており、品目番号と原産国の欄を自分で引けば、本記事で示した読み方をそのまま当てはめて確認できる。個人輸入の具体的な手続きや税額の計算が必要な場合は税関相談官に確認するのが確実であり、日本の輸入量と相手国の傾向についてはコーヒーの輸入統計を扱った記事で確認できる。
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参考文献
- 実行関税率表(2026年8月8日版)第9類 コーヒー、茶、マテ及び香辛料/税関
https://www.customs.go.jp/tariff/2026_08_08/data/j_09.htm - 実行関税率表(2026年8月8日版)第21類 各種の調製食料品/税関
https://www.customs.go.jp/tariff/2026_08_08/data/j_21.htm - 関税定率法(明治四十三年法律第五十四号)第3条・別表(関税率表)第09.01項・第21.01項/e-Gov 法令検索
https://laws.e-gov.go.jp/law/143AC0000000054 - 経済連携交渉等の状況について(2026年7月)/農林水産省 輸出・国際局
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/renkei/fta_kanren/attach/pdf/index-30.pdf - 税率決定までの流れ(輸入統計品目表(実行関税率表)の読み方)/税関
https://www.customs.go.jp/tariff/mikata/mikata2.htm - 1504 特恵適用国・地域一覧(カスタムスアンサー)/税関
https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1504_jr.htm
