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エスプレッソの抽出時間は20〜30秒|ショットの抽出比率と収量の決め方

エスプレッソのショット理論|抽出比率・時間・収量

エスプレッソの抽出時間は、20〜30秒が基準である。スペシャルティコーヒー協会(SCA)の旧来の定義は、7〜9gの粉から25〜35mlを20〜30秒で抽出するものとしている[1][2]。イタリアエスプレッソ協会(INEI)の認証基準は25秒±5秒で、幅は同じ20〜30秒になる[3]。SCAが2017年に行った調査では、回答者の51%が平均25〜30秒で抽出していた[2]。

ただし、時間は先に決める数字ではない。先に決めるのは、粉の量と、杯に落とす液の量の比率(抽出比率)である。この記事では、抽出時間の基準、抽出比率、リストレットとルンゴの区分、比率を変えたときの濃さと成分の変化、抽出率と味、時間がずれたときの直し方の順に、出典のある数値だけで整理する。

この記事の結論
  • エスプレッソの抽出時間は20〜30秒が基準で、SCAの2017年の調査では回答者の51%が25〜30秒だった。
  • 抽出比率は粉と液の重さの比で、同じ調査の平均は1:2(粉18gなら液36g)である。
  • 粉20gの実験では、溶け出す成分の約7割が最初の20gに出ており、比率を伸ばすほど液は薄くなる。
目次

抽出時間の基準|20〜30秒

団体の定義、認証基準、現場の調査、メーカーのレシピを同じ項目で並べる。粉量と液量は出どころによって倍ほど違うが、抽出時間はどれも20〜35秒の中に収まっている。

出どころ粉量液量抽出時間圧力
SCA(旧SCAA)の定義[1][2]7〜9g(ダブルは14〜18g)25〜35ml20〜30秒9〜10気圧
INEIの認証基準[3]7g±0.525ml±2.5(泡を含む)25秒±5秒9bar±1
SCAの2017年調査の平均(回答275)[2]18〜20g36.5g25〜30秒9bar
ラ・マルゾッコのレシピ例[5]18g36g25〜35秒9bar

上の2つは粉7g前後の1杯分を前提にした基準、下の2つは粉18g前後を使ういまのレシピである。2020年に学術誌 Matter に載った論文は、SCAの旧来の定義は現在ほとんどのカフェで使われているレシピから大きく離れており、いまは15〜22gの粉から30〜60gを抽出するレシピが多いと述べている[1]。2017年の調査は回答者の76%が米国で、数値は基準ではなく回答の平均である[2]。

時間はどこから数えるか

抽出時間をどこから数えるかは、競技の規則に明文がある。ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)の2026年の規則は、抽出時間は競技者がマシンの抽出サイクルを作動させた時点から始まると定めている[4]。同じ規則は、エスプレッソを約30mlの飲み物とし、マシンの抽出圧を8.5〜9.5barに設定するとしている[4]。

抽出比率(ブリューレシオ)とは

抽出比率は、粉の重さに対する、杯に入った液の重さの比である[5]。粉18gから液36gを落とせば1:2になる。SCAの2017年の調査では、回答の平均は1:2で、全体は1:1.5〜1:2.5の範囲にあった[2]。2020年の論文も、現代の代表的なレシピとして粉20gから液40gを挙げている[1]。

比率は体積(ml)ではなく重さ(g)で管理する。ラ・マルゾッコは、はかりを使えば粉と液の両方をすばやく量れるとしている[5]。体積で量ると泡のぶんが入る。INEIの基準の25mlは、クレマ(泡)を含めた量である[3]。

リストレット・ノルマーレ・ルンゴの比率

比率が小さいものをリストレット、標準をノルマーレ、大きいものをルンゴと呼ぶ。ラ・マルゾッコは、1:1〜1:2をリストレット、1:2〜1:3をノルマーレ、1:3〜1:4をルンゴとし、この区分には解釈の幅があると断っている[5]。ミュンヘン工科大学の研究者らは2023年の論文で、1:1をリストレット、1:2をエスプレッソ、1:3をエスプレッソ・ルンゴとして実験している[6]。

呼び名比率(ラ・マルゾッコ[5])粉18gのときの液量(当サイトの計算)
リストレット1:1〜1:218〜36g
ノルマーレ(標準)1:2〜1:336〜54g
ルンゴ1:3〜1:454〜72g

同社は、比率が小さいほど液は濃くとろみが強くなり、大きいほど薄く伸びた液になると説明している[5]。焙煎度との相性については、一般に深煎りは小さい比率、浅煎りは大きい比率が合うとしている[5]。

比率を変えると、濃さと成分はどう変わるか

エスプレッソの成分はどの区間で出るか 粉20gのエスプレッソを60gまで抽出したとき、成分がどの区間で出たかを帯で示した図。溶けた固形分は、最初の20gに2.97g(60gまでに出た量の72%)、次の20gに0.90g、最後の20gに0.28g。カフェインは、最初の20gに130.0mg(同64%)、次の20gに52.6mg、最後の20gに21.4mg。Schmieder ほか(2023)の15条件の平均値から作図。 Fig. Extraction 溶け出す成分の7割は、最初の20gに出る 粉20gから60gまで抽出したとき、成分がどの区間で出たか 最初の20g(1:1まで) 次の20g(1:2まで) 最後の20g(1:3まで) 溶けた固形分 2.97g(全体の72%) +0.90g +0.28g カフェイン 130.0mg(全体の64%) +52.6mg +21.4mg 比率を伸ばすほど杯の中身は増えるが、増えるぶんは薄い。カフェインは固形分より遅れて出る。 出典:Schmieder ほか(2023, Foods)Table 2 の平均値から作図。「全体」は60gまでに出た量(本文・参考文献に対応) 図解:coffee-pick.com

比率を伸ばすと、杯の中身は増えるが、増えるぶんは薄い。2023年の論文は、粉20gのエスプレッソを10の区間に分けて採取し、溶けた固形分(TDS)、カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸の一種(5-CQA)を測った[6]。どの成分も、濃度は抽出の最初がいちばん高く、抽出が進むにつれて指数関数的に下がった[6]。

15の条件の平均では、杯に入った固形分は、液20g(1:1)で2.97g、40g(1:2)で3.87g、60g(1:3)で4.15gだった[6]。60gまでに出た固形分のうち、72%は最初の20gに入っている計算になる。1:2のときの濃度は液100gあたり9.68gで[6]、同じ平均値から計算すると1:1は約15%、1:3は約7%になる。

比率液量溶けた固形分濃度カフェイン
1:120g2.97g約15%(計算)130.0mg
1:240g3.87g9.68%182.6mg
1:360g4.15g約7%(計算)204.0mg

表は、コロンビア産のアラビカ種を粉20gで使った実験の平均値である[6]。豆や粉量が変われば数値は変わる。読み取れるのは向きで、比率を1:1から1:3へ伸ばすと、濃度は半分以下になり、杯に入るカフェインは約1.6倍になる。

成分によって出方も違う。濃度の下がり方は、トリゴネリンと固形分全体がいちばん速く、5-CQAとカフェインはそれより遅かった[6]。カフェインは後半にも出続けるので、短く止めるリストレットは、濃いわりにカフェインの量は少ない。味の成分の出る順について、ラ・マルゾッコは、塩類、酸、糖、苦みの順に溶け出すと説明している[5]。

ドリップコーヒーと比べると、濃さの桁が違う。SCAがドリップの基準とする濃度は1リットルあたり11.5〜13.5g(1.15〜1.35%)である[7]。1:2のエスプレッソの9.68%は、そのおよそ7〜8倍にあたる(当サイトの計算)。

抽出率と味の関係

抽出率は、使った粉の重さに対して、液に溶け出した成分の重さが占める割合である[1]。液の屈折率を測って求める[1]。2020年の論文によれば、SCAは抽出率が17〜23%のときに最もおいしくなりやすいとしており、23%を超えると苦く、17%を下回ると酸っぱくなることが多い[1]。

濃度と抽出率は別の数字である。濃度は液の中の成分の割合、抽出率は粉からどれだけ取り出したかを表す。前の節の実験の平均値[6]を粉20gで割ると、抽出率は1:1で約15%、1:2で約19%、1:3で約21%になる(当サイトの計算)。この実験では、1:1は液がいちばん濃いのに、粉から取り出した量はいちばん少ない。なお、ドリップについてSCAが基準とする抽出率は18〜22%である[7]。

抽出時間がずれたときの直し方

粉量と目標の液量を決めたら、その液量に届くまでの時間を見る。時間は、挽き目が合っているかどうかの目安になる。ラ・マルゾッコは、目標の比率に25〜35秒で届くのがよいとし、20秒未満で届いてしまうときは挽き目を細かくするよう勧めている[5]。挽き目の合わせ方は「エスプレッソの挽き目調整」で扱っている。

湯の流れを遅くする方法は、挽き目を細かくする、粉を強く詰める、粉を増やす、水圧を下げる、のいずれかである[1]。逆に流れが遅すぎるときは、これらを反対に動かす。

時間よりも先に、液量をそろえる。2023年の論文は、40gで止めるはずの液を38gで止めると、流量を半分に落としたときと同じ程度に濃度が変わり、その2gの差は抽出時間にすると約1秒だと述べている[6]。安定したエスプレッソをいれるには、流量・挽き目・湯温を詰める前に、まず比率を正確にそろえるべきだというのが同論文の結論である[6]。杯の下にはかりを置き、目標の重さで止めるのが確実である。

淹れ方全体の見取り図は抽出方法4タイプの比較ガイドにまとめています。

結論

エスプレッソの抽出時間の基準は20〜30秒で、いまの現場では25〜30秒が多い。先に決めるのは粉量と液量の比率で、起点は1:2(粉18gなら液36g)である。時間は、その比率に届くまでの結果として見る。比率を小さくすれば濃くとろみのある液になり、大きくすれば薄くなる一方で、杯に入るカフェインは増える。まずは同じ豆と同じ挽き目のまま、液量だけを変えて飲み比べると、比率の効き方がつかめる。抽出の方式全体の中での位置づけは「コーヒーの淹れ方は4種類で整理できる|透過・浸漬・加圧・煮出しの原理マップ」に、圧力とクレマについては「エスプレッソのクレマとは|9気圧抽出が生む泡と濃さの科学」にまとめている。

参考文献

  1. Cameron, M.I.; Morisco, D.; Hofstetter, D. ほか (2020)「Systematically Improving Espresso: Insights from Mathematical Modeling and Experiment」, Matter, 2(3), 631-648(SCAの旧来の定義=7〜9g・25〜35mL・20〜30秒・9〜10bar/抽出率17〜23%)
    https://doi.org/10.1016/j.matt.2019.12.019
  2. Specialty Coffee Association「Defining the Ever-Changing Espresso」25 Magazine, Issue 3(2018年。2017年3月の調査・回答275=比率の平均1:2・25〜30秒が51%/旧SCAAの定義/2026-10-04 閲覧)
    https://sca.coffee/sca-news/25-magazine/issue-3/defining-ever-changing-espresso-25-magazine-issue-3-zyx36
  3. Istituto Nazionale Espresso Italiano「The Certified Italian Espresso and Cappuccino」(認証基準=粉7g±0.5・25秒±5秒・25ml±2.5・9bar±1)※公式サイトのPDFは現在取得できないため Internet Archive の保存版
    https://web.archive.org/web/20241223040119/http://www.espressoitaliano.org/files/File/istituzionale_inei_hq_en.pdf
  4. World Coffee Championships「2026 World Barista Championship Official Rules and Regulations」(3.1 エスプレッソの定義/14.2.7 抽出時間の数え方/2026-10-04 閲覧)
    https://wcc.coffee/s/2026-World-Barista-Championship-Official-Rules-and-Regulations.pdf
  5. La Marzocco「Using Espresso Brew Ratios」(2022年11月22日。リストレット1:1〜1:2・ノルマーレ1:2〜1:3・ルンゴ1:3〜1:4/25〜35秒/2026-10-04 閲覧)
    https://www.lamarzocco.com/it/en/using-espresso-brew-ratios/
  6. Schmieder, B.K.L.; Pannusch, V.B.; Vannieuwenhuyse, L.; Briesen, H.; Minceva, M. (2023)「Influence of Flow Rate, Particle Size, and Temperature on Espresso Extraction Kinetics」, Foods, 12(15), 2871(粉20g・比率1:1/1:2/1:3 の成分量=Table 2)
    https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10418593/
  7. Specialty Coffee Association「Coffee Standards」Revised 2018(§5.1 Golden Cup Standard=ドリップの濃度 11.5–13.5 g/L・可溶性成分の収率 18–22%)※SCA公式のPDFは現在リンク切れのため Internet Archive の保存版
    https://web.archive.org/web/20230201145358/https://sca.coffee/s/Coffee-Standards-compressed.pdf

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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