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コーヒーの単収はなぜ国で倍違うのか|ベトナムとブラジルのkg/haを品種・密植・灌漑・施肥で読む

コーヒーの単収はなぜ国で倍違うのか|ベトナムとブラジルのkg/haを品種・密植・灌漑・施肥で読む

コーヒーの単収は、ベトナムのロブスタで2.82〜2.97MT/ha(MY2021/22〜MY2023/24の推計・見込み)[1]、ブラジルでは全国平均が30.4サカ/ha、アラビカの平均が24.1サカ/ha(2025年の調査)[2]と、国によって大きく異なる。ただしブラジルでもコニロン(ロブスタ系)の平均単収は53.9サカ/ha(2026年の見込み)で[3]、品種をそろえると差は縮む。その上に灌漑・施肥・植栽密度などの栽培条件が重なる。ハンドドリップで飲む一杯の背景にある収量の構造を知っておくと、価格や供給の変動を単純な豊作・不作の話に終わらせずに読める。

この記事の結論
  • ベトナムとブラジルの単収差は、まず品種構成で分かれ、灌漑や施肥、植栽密度が積み重なる。
  • ベトナムのロブスタは2.82〜2.97MT/ha、ブラジルはアラビカ24.1サカ/ha・コニロン53.9サカ/haだ。
  • 産地の単収を比べるときは、単位や年次、調査回まで確かめると読み違いを防げる。

この記事は「コーヒー豆を知る完全ガイド|産地・品種・精製・焙煎でわかる味の地図」の各論です。

目次

単収の単位をそろえる

MT/ha・kg/ha・サカ/haという三つの単位

コーヒーの単収を国ごとに比べるとき、最初につまずくのは単位である。ベトナムの資料はMT/ha(トン/ヘクタール)で単収を示し[1]、ブラジルの資料はサカ(60kg入りの袋)を単位にサカ/haで単収を示す[2][3]。MT/haは1ヘクタールあたりの収穫量をトン単位で表したもので、1MT=1,000kgだからkg/haへの置き換えは単純な倍数変換にすぎない。一方でサカ/haはブラジルで慣習的に使われる単位で、そのままでは他国の値と並べにくい。

  • MT/ha(トン/ヘクタール):ベトナムの資料で使われる単位[1]
  • サカ/ha(60kg入りの袋/ヘクタール):ブラジルの資料で使われる単位[2][3]
  • kg/ha(キログラム/ヘクタール):両者をそろえるための基準単位

サカからkgへの換算(計算)

サカ/haをkg/haに直すには、サカの数値に60kgを掛ける。Conabの資料は生産や輸出の袋数を60kg入りの袋(sacas de 60 quilos)で数えており[2]、この60kgを基準に計算すると、アラビカの単収24.1サカ/ha[2]は24.1×60で1,446kg/ha相当になる(計算)。同様にコニロンの53.9サカ/ha[3]は60を掛けて3,234kg/ha相当になる(計算)。この換算はあくまで単位をそろえるための計算であり、資料が直接示した数値ではない点を踏まえておきたい。

何の重さを数えた値か

USDAの表はベトナムのロブスタの生産を生豆(Green Bean)の千袋で示しており[1]、南ミナスの試験も単収を精選した豆の袋(sacas beneficiadas)で数えている[4]。どちらも収穫直後の果実(チェリー)の重さではない。国や資料をまたいで単収を並べるときは、何の重さを数えた値かも確かめてから比べる必要がある。

深掘りメモ|単位のそろえ方

サカ/haとMT/haをそのまま並べると数字の大小に惑わされやすいが、60kgを掛けてkg/haにそろえてから比べると、品種構成の違いがそのまま単収差として現れやすくなる。ベトナムとブラジルの値を扱うときも、この換算を経たうえで並べたほうが読み間違いを防げる。

ベトナムの単収を読む(USDA GAIN 2023)

栽培面積と生産量から見た平均単収

USDA Foreign Agricultural ServiceのGAIN報告(2023年5月24日)は、ベトナムのロブスタについて、栽培面積・生豆の生産量・平均単収を年度ごとの表にまとめている[1]。MY2021/22(2021年10月開始)は栽培面積620,000ヘクタール、生産量30,480千袋で、平均単収は2.95MT/haとなっている[1]。MY2022/23は栽培面積611,500ヘクタール、生産量28,740千袋で、平均単収は2.82MT/haに下がっている[1]。栽培面積がほぼ変わらない二つの年度を並べると、生産量の変動がそのまま単収の変動として表れることが分かる。

USDA現地スタッフ(Post)の推計・見込み値という条件

MY2023/24については栽培面積611,500ヘクタール、生産量30,230千袋、平均単収2.97MT/haという値が示されているが、これはUSDAの現地スタッフ(Post)による見込み(Forecast)であり、実績が確定した数値ではない[1]。報告は、中部高原地域の気象条件がMY2023/24の生育に好ましいという業界関係者のコメントも添えている[1]。MY2021/22とMY2022/23の値もPost推計(Estimate)であり、いずれも政府の確定統計そのものではない点を踏まえて読む必要がある。

年度栽培面積(ha)生産量(千袋)平均単収(MT/ha)位置づけ
MY2021/22620,00030,4802.95[1]Post推計
MY2022/23611,50028,7402.82[1]Post推計
MY2023/24611,50030,2302.97[1]Post見込み(Forecast)
深掘りメモ|見込み値の読み方

2.97MT/haという最新の値は収穫が終わる前の見込みであり、翌年の報告で上下に修正される余地を残す。MY2021/22からMY2023/24までの3つの年度を並べるときは、確定した実績と見込み値を同じ重みで扱わないほうがよい。

ブラジルの単収を読む(Conab)

アラビカの単収(2025年第4回調査)

ブラジルの国家食料供給公社Conabが2025年12月に公表した第4回作柄調査によれば、アラビカの生産中の面積は前年比1.5%減の149万ヘクタールとなり、単収も2024年の作柄から8.4%低下して24.1サカ/haになった[2]。この結果、当該サイクルの収穫量は3,576万袋と見込まれ、前季比で9.7%の減少である[2]。面積と単収がともに縮小したことが、収穫量の落ち込みに重なって効いている構図が読み取れる。

コニロンの単収(2026年第2回調査)

一方、2026年5月に公表された第2回作柄調査では、コニロン(ロブスタ系品種)の全国平均単収は前年比3.5%減の53.9サカ/haと示されている[3]。この調査ではコニロンの生産中の面積が38万8,220ヘクタールに広がると見込まれており、単収の低下を面積の拡大で補う構図が説明されている[3]。同じ調査は、全国の生産が前季比18%増の6,670万袋になるとも予測しているが[3]、これは全国合計の話であり、品種ごとの内訳とは別の数字として扱う必要がある。

年次・調査回が異なる値を比べるときの注意

ここで並べたアラビカの24.1サカ/ha(2025年第4回調査)とコニロンの53.9サカ/ha(2026年第2回調査)は、公表年も調査回も異なる値である[2][3]。両者を単純に「同じ年のブラジルの単収」として引用すると、実際には対象の年(2025年産と2026年産)も公表の時期も違う調査結果を混ぜてしまうことになる。単収を品種や国で比べる情報を読むときは、注釈にある年次と調査回まで確認する習慣を持っておきたい。

品種調査公表年月単収kg/ha換算
アラビカConab第4回調査2025年12月24.1サカ/ha[2]1,446kg/ha(計算)
コニロンConab第2回調査2026年5月53.9サカ/ha[3]3,234kg/ha(計算)
深掘りメモ|調査回のずれ

Conabの作柄調査は同じ年の作柄について複数回発表される(ここで使ったのは2025年の第4回と2026年の第2回)。回の数字だけを見ると同じ性格の値に見えるが、対象年が異なる値を並べる場合は、その年次と調査回を必ず確認したうえで比較する必要がある。

単収を分ける三つの要因

単収の国差を要因に分けると、次の三つに整理できる。

  • 品種(ロブスタ/コニロンとアラビカ)
  • 灌漑と施肥
  • 植栽密度

品種(ロブスタ/コニロンとアラビカ)

年次と調査回は違うが、Conabの調査では、コニロンの単収は53.9サカ/haで、アラビカの24.1サカ/haより高い[2][3]。USDAの報告では、ベトナムのMY2023/24の生産見込み3,130万袋(生豆換算)のうち3,023万袋がロブスタで、2.97MT/haという単収もロブスタの表の値である[1]。FAO(国連食糧農業機関)の報告も、ベトナムの生産者が世界でも単収の高いロブスタ生産者になったと記している[5]。つまり国別の単収差を見るとき、まず確認すべきは「アラビカとロブスタ(コニロン)のどちらが主体か」という品種構成であり、そのうえで灌漑や施肥、植栽密度といった栽培条件が積み重なる。

灌漑と施肥

FAOの2007年の報告は、ベトナムの平均単収が1トン/ha未満から2トン/ha超へ倍増し、周辺国の平均の2倍を超える水準になったと記している[5]。同じ報告は、灌漑などの技術がベトナムの農家を世界で最も生産性の高いロブスタ生産者にしたと書き、別の箇所では、灌漑と高水準の化学肥料の使用を組み合わせたことが世界水準の単収を生んだとしている[5]。ブラジル南ミナスの試験地(2005〜2008年の4収穫)でも、灌漑した区画はしなかった区画より、期間平均で列間3.8mの疎植で32%、列間1.9mの密植で27%多く収穫した[4]。同じ試験の報告は、灌漑による差がそれ以上大きくならなかったのは2004年と2005年の雨の降り方が適していたためとし、2006年の大きな水不足の翌2007年には灌漑区が平均97.7%多く収穫したと書いている[4]。灌漑の効果を語るときは、対象年の降水もあわせて見る必要がある。

植栽密度

同じ南ミナスの試験(2005年から2008年にかけての4収穫の平均)では、列間1.9mの密植区が77.3サカ/ha、列間3.8mの疎植区が48.4サカ/haという結果になっている[4]。株間では0.5m間隔が69.3サカ/ha、0.75m間隔が56.5サカ/ha、1.0m間隔が59.6サカ/haで、0.5mが最も多かったが、0.75mより1.0mのほうが多く、間隔の順には並んでいない[4]。ただしこれは一つの試験地における結果であり、国全体の単収差をこの一つの要因だけで説明し切るものではない。ベトナムとブラジルの単収差を植栽密度だけに帰着させるのは早計で、品種構成や灌漑との組み合わせとして読む必要がある。

深掘りメモ|要因の重なり方

品種構成が単収の土台を決め、その上に灌漑・施肥・植栽密度が乗る、という順序で見ると数字の食い違いが整理しやすくなる。密植や灌漑の効果だけを取り出して国別の差の説明に使うと、品種構成という一段目を見落とすことになりやすい。

長い目で見た世界の単収

1970年から1990年の変化

Jhaほかによる2014年の論文は、FAOの統計を集計した値として、1970年から1990年の間に世界のコーヒー栽培面積が880万ヘクタールから1,110万ヘクタールへ、平均単収が433kgから543kg/haへ、それぞれ25%増加したと記している[6]。同じ期間に世界の生産量は58%増加したとされる[6]。栽培面積の増加率と生産量の増加率の差は、単収そのものが伸びたことを反映した数字である。

1990年から2010年の変化

同じ論文は、1990年から2010年にかけて世界のコーヒー栽培面積がむしろ1,020万ヘクタールへ縮小した一方で、生産量は36%増加したと記している[6]。面積が減っても生産が増えたということは、単収の面で何らかの集約化が進んだことを示す数字である。この論文はFAOの統計を年次つきで集計した値であり、直近の世界平均単収そのものを示す最新の数字ではない点は留意しておきたい。

深掘りメモ|世界規模での単収の伸び

Jhaほかは国の例として、ブラジルでは1996年から2010年に栽培面積が12%増えただけで生産が112%増え、その間に単収が89%上がったとFAOの統計から示している[6]。ただし世界全体の集計からは、どの国のどの要因がどれだけ寄与したかまでは特定できない。

結論

単収差を読むときの見方

ここまで見てきたように、ベトナムとブラジルの単収の違いは、まず品種構成(ロブスタ主体かアラビカ主体か)で大きく分かれ、その上に灌漑・施肥・植栽密度が積み重なる[1][2][3][4][5]。単収が高いことは、そのまま品質の高さや農家の所得の豊かさを意味するわけではなく、単収の差を農家の腕の差として読むこともできない。

読者への次の一歩

コーヒー豆のパッケージに産地としてベトナムやブラジルの名前を見かけたとき、その裏には品種構成・灌漑・施肥・植栽密度という複数の層が重なった単収の物語がある。ハンドドリップで淹れる一杯の背景にこうした数字と条件の積み重ねがあることを知っておくと、価格や供給の変化を単純な豊作・不作だけで片付けずに読めるようになる。産地ごとの背景をさらに知りたい場合は、「産地」カテゴリで他の産地の情報にも触れてみてほしい。

参考文献

  1. Coffee Annual: Vietnam(Report Number VM2023-0025)
    https://apps.fas.usda.gov/newgainapi/api/Report/DownloadReportByFileName?fileName=Coffee+Annual_Hanoi_Vietnam_VM2023-0025.pdf
  2. Produção de café em 2025 é estimada em 56,5 milhões de sacas(4º Levantamento de Café 2025)
    https://cast.conab.gov.br/post/2025-12-04_4_lev_cafe
  3. Conab prevê alta de 18% na produção de café em 2026 estimada em 66,7 milhões de sacas(2º Levantamento da Safra de Café 2026)
    https://cast.conab.gov.br/post/2026-05-21_2_lev_cafe/
  4. Espaçamento versus irrigação suplementar em cafeeiros no Sul de Minas
    https://www.alice.cnptia.embrapa.br/alice/bitstream/doc/923548/1/Espacamentoversusirrigacaosuplementar.pdf
  5. Diversification by smallholder farmers: Viet Nam Robusta Coffee(Agricultural Management, Marketing and Finance Working Document 19)
    https://www.fao.org/4/ap301e/ap301e.pdf
  6. Shade Coffee: Update on a Disappearing Refuge for Biodiversity
    https://doi.org/10.1093/biosci/biu038

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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