コーヒー生豆の「1袋=60kg」は、2007年の国際コーヒー協定が量を数える単位として定義した数字であり[1]、現物の袋の重さは産地で標準とされる重さに任されていて[2]、袋を使わずコンテナにバルクで積んで運ばれる生豆もある[3]。生産量や輸出量を「何千袋」と表す統計の袋と、港や倉庫で目にする麻袋の重さは、同じ言葉でも指しているものが違う。
- コーヒーの麻袋が何キロかは産地の標準に任されており、60kgは2007年の国際コーヒー協定が定めた量の単位である。
- 現物の袋は60kgが最も一般的だが、46kg、50kg、69kg、70kgの袋を使う国もある。
- 袋を使わずコンテナにバルクで運ばれる生豆もあり、袋数は60kg換算の単位か現物の数かを区別して読む。
「袋」は統計で使われる単位である
2007年の国際コーヒー協定が定める60kg
国際コーヒー協定(2007年)第2条(2)は「Bag means 60 kilogrammes or 132.276 pounds of green coffee」と定めている[1]。同じ項は、tonne(トン)を1,000キログラム、poundを453.597グラムと定義している[1]。これは現物の袋の重さを決める規定ではなく、協定の中で量を表すための定義である。
統計上の「袋」と現物の袋は別物
国際貿易センター(ITC)の『The Coffee Guide』第4版は、国際的に受け入れられた慣行に従い、同書の数量データはすべて正味60kg(132.28ポンド)の生豆の袋、またはその相当量で表す、と断っている[3]。生産量や輸出量を「何千袋」と書くときの袋は、この60kg換算の単位である[3]。現物の袋を1つずつ数えた数ではないので、ある国の生産量を袋数で見ても、その国で使われている袋が60kgちょうどだということにはならない。
60kgという定義は協定の条文に書かれているが[1]、この定義は各生産国の袋の重さを決めるものではない。60kg換算で表した袋数[3]からは、現物の袋が何kgだったかは分からない。
取引所の規則が決めていること
1ロット37,500ポンドという単位
ICE Futures U.S.のコーヒー「C」の規則では、1ロットは水洗式アラビカ37,500ポンドと定められている(Rule 8.03)[2]。この規則集の冒頭には、取引所がコーヒー「C」を段階的に終了し、新しいアラビカ先物に置き換える予定だという案内がある[2]。先物の仕組みや価格については、ここでは扱わない。
袋の重さを数字で決めていない規則
同じ規則は、受け渡すコーヒーが「recognized commercial size for the growth」の袋又は包装に入っていること、つまり原産国や原産地区で標準とされる重さの袋であることを求め、1ロットは同じ出荷重量の袋又は包装から成らなければならないとしている[2]。袋の材質は、サイザル、ヘネケン、ジュート、バーラップまたは同様の性質を持つ織物で、袋そのものの重さが最低700グラムあることとされている[2]。取引所の規則は、中身を入れた1袋の標準の重さを数字では定めておらず、産地で標準とされる重さに任せている[2]。
60kg換算で約283.5袋という計算
37,500ポンドを協定の定義(1ポンド=453.597グラム)で換算すると約17,010kg、約17.0トンになる(計算)[1][2]。これを60kgの袋数に直すと、17,010kg÷60kg=283.5袋になる(計算)。この283.5という数字は、ICE規則が定める重量単位を、協定が定める60kgという単位に置き換えて数えたときの値であり、現物の袋数を実測したものではない。
37,500ポンドという1ロットの重量は、協定の60kg単位に当てはめると約283.5袋に相当する(計算)[1][2]。1ロットの量はポンドで決まっているので、現物で何袋になるかは、その産地の袋の重さによって変わる。
麻袋という現物の荷姿
60kgが最も一般的だが他の重さもある
ITCの『The Coffee Guide』第4版によれば、60kgの袋が取引で最も一般的な大きさであるものの、46kg、50kg、69kg、70kgの袋を使う国もある[3]。同書のこの箇所は、どの国が何kgの袋を使うかは挙げていない。同書は別の箇所で、数量を袋で取り決める場合は袋の大きさ(例として60kg、69kg、70kg)を定めることが欠かせないと書いている[3]。
紙袋・ジュート袋・大型袋という例
同じ手引きは、コーヒーの袋の例として、30kgの紙袋、標準の60kg・69kgのジュート袋、上級品向けにポリエチレンの内袋を付けた標準の60kgジュート袋、1,500kgの高バリア性プラスチックの大型袋を挙げている[3]。
- 30kgの紙袋[3]
- 標準の60kg・69kgのジュート袋[3]
- 上級品向け:ポリエチレンの内袋を付けた標準の60kgジュート袋[3]
- 1,500kgの高バリア性プラスチックの大型袋[3]
袋の材質も大きさも1種類ではない。
コンテナとバルクで運ぶ
ほとんどがコンテナで運ばれる
ITCの手引きでは、ほとんどのコーヒーはコンテナで運ばれ、在来船(ブレークバルク)の定期的なサービスはもう提供されていないと説明されている[3]。20フィートコンテナには最大21トンのコーヒーが入るとされ[3]、バルクであればコンテナ1本に21〜24トンを積めるとされている[3]。同書は、コーヒーの種類によっては、袋詰めに比べて積載量がほぼ17%増えうるとしている[3]。バルク輸送の実験は1980年代初めに始まったとされ[3]、正確なデータは得にくいものの、海運関係者の情報として、主要生産国のいくつかは米国向けを除き大半をバルクで出荷しているという記述もある[3]。
- ほとんどのコーヒーはコンテナで運ばれ、ブレークバルクの定期的なサービスはもう提供されていない[3]
- 20フィートコンテナには最大21トン[3]
- バルクなら1本に21〜24トン、コーヒーの種類によっては袋詰めよりほぼ17%多く積める[3]
- バルク輸送の実験は1980年代初めに始まった[3]
結露という損害リスク
ITCの手引きは、袋詰めでコンテナ輸送されるコーヒーの損害請求の主な原因は常に結露による損害で、バルクで出荷した場合ははるかに起きにくいとしている[3]。Codex Alimentariusの実施規範(CXC 69-2009)も、コーヒーは袋またはバルクで、ふつう18〜22トン積みのコンテナで運ばれると述べ[4]、輸送中の温度変化によって結露と再吸湿が起きうることを指摘している[4]。同じ規範は、積み込み前にコンテナが清潔で乾いており、水の浸入を許す構造的な損傷が無いことを確かめること、袋は互いに支え合うようよく積み重ねて交差させ、縦方向の空洞(煙突)ができないようにすることを勧めている[4]。ここでは結露を、荷の損害の原因としてだけ扱う。
資料によって異なる積載量の数字
ここまでに出てきた積載量の数字は、資料によって異なる。ITCは20フィートコンテナに最大21トン、バルクならコンテナ1本に21〜24トンとしており[3]、Codexの実施規範は袋とバルクを分けずに、ふつう18〜22トン積みのコンテナで運ばれるとしている[4]。荷姿を分けた数字か、最大の値か通常の値かという前提がそろっていないので、どれか1つを正しい値としては扱わない。
| 条件 | コンテナ1本あたりの量 | 資料 |
|---|---|---|
| 20フィートコンテナ(最大) | 最大21トン | ITC[3] |
| 袋又はバルク(ふつうのコンテナ) | 18〜22トン積み | Codex CXC 69-2009[4] |
| バルク | 21〜24トン | ITC[3] |
21トン・21〜24トン・18〜22トンという3つの数字は、荷姿を分けているか、最大か通常かという条件がそれぞれ違う[3][4]。使うときは、どの条件の数字かを添える。
日本に着いてから―検査と倉庫
バルク輸入を前提にした検査の採り方
厚生労働省の令和元年11月29日付けの通知は、ケニア産コーヒー豆について「輸入形態を踏まえ」、試験品採取の方法を改めている[5]。コンテナによるバルク形態で輸入される食品について、ロットを代表する任意の1コンテナ内の上部、中部、下部の計15か所から計10kg以上を採取し、これを縮分して1kg・1検体とするという採取方法が加えられた[5]。コーヒー豆の項に、袋を使わない輸入形態を想定した採り方が書かれていることになる。この通知は検査命令に関するものだが、残留農薬の基準や違反の記録はここでは扱わない。
倉庫での検量と定温保管
富士倉庫株式会社(横浜)の説明によれば、産地によって1袋の重量は変わるものの、約60キロ〜70キロの麻袋をコンテナから出し、1袋ずつ検量してパレットに積んでいくとされる[6]。同社の説明では、20フィートコンテナには約18トン、40フィートコンテナには約24トンほどが積載されているという[6]。同社は、出庫までの間、品質を保持するため15℃に設定した定温倉庫で保管しているとし、同じ案内の保管作業のページでは、風通しをよくするために壁から30センチ離して積むと説明している[6]。これは1社の説明であり、業界全体の標準として示されているものではない。家庭での保存方法については、コーヒー豆の保存方法を解説した記事に委ねる。
結論
「袋」の数字を見たときの確認ポイント
統計や記事で「袋」という数字に出会ったとき、まず確かめたいのは、それが60kg換算の単位なのか、現物の袋を数えた数なのかという点である。60kg換算で考えるときの計算例としては、37,500ポンド相当の約17.0トンを60kgで割ると約283.5袋になる(計算)[1][2]。現物の袋は60kgが最も一般的だが、46kg、50kg、69kg、70kgの袋を使う国もあり[3]、紙袋や大型袋、袋を使わないバルク輸送もある[3][4]。産地から焙煎所までの流れの全体像はコーヒーのサプライチェーンを解説した記事に、生豆の等級については生豆の等級を解説した記事に委ねる。
- 「袋」という数字を見たら、60kg換算の単位か実数かを確かめる
- 荷姿(麻袋かバルクか)によって、コンテナ1本あたりの量の基準も変わる
本記事で確認できたのは、60kgという数字が国際コーヒー協定の定義上の単位であること[1]、取引所の規則は袋の重さそのものを数字で固定していないこと[2]、現物の袋には46kg、50kg、69kg、70kgのものもあり、紙袋や大型袋、バルク輸送も用いられていること[3][4]、日本の検査の採取方法にバルク形態を想定した定めがあること[5]、倉庫会社が麻袋を1袋ずつ検量して保管していると説明していること[6]である。「袋」という言葉を見るたびに、単位としての60kgか、現物の重さかを区別する習慣を持つことが、産地や流通についての記事を読むときの実用的な次の一歩になる。
参考文献
- International Coffee Agreement 2007
https://www.ico.org/documents/ica2007e.pdf - Coffee “C” Rules(ICE Futures U.S. Rulebook Chapter 8)
https://www.ice.com/publicdocs/rulebooks/futures_us/8_Coffee.pdf - The Coffee Guide, Fourth Edition, International Trade Centre
https://www.intracen.org/file/itccoffee4threport20210930webpagespdf - Code of practice for the prevention and reduction of ochratoxin A contamination in coffee(CAC/RCP 69-2009), Codex Alimentarius
https://www.fao.org/input/download/standards/11250/CXP_069e.pdf - 食品衛生法第26条第3項に基づく検査命令の実施について(薬生食輸発1129第1号), 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000572323.pdf - コーヒー豆の保管業務(入庫〜保管〜出庫作業), 富士倉庫株式会社
https://www.fujisoko.co.jp/business/logistic-storage/coffee/
