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コーヒーの袋に「天然」「純」「最高級」はどこまで書けるのか|公正競争規約の条件を読む

コーヒーの袋に「天然」「純」「最高級」はどこまで書けるのか|公正競争規約の条件を読む

コーヒーの表示は、レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約によって、「天然」「純」は不当表示の例として挙げられ、「最高級」は客観的な根拠に基づかないで用いて特に優良であるかのように誤認されるおそれがある場合に禁じられている[1]。この規約は、景品表示法第36条第1項に基づいて定められたものである[1]。棚に並ぶ袋の文字を見比べると、その線引きの理由が見えてくる。

この記事の結論
  • 「天然」「純」「最高級」は、景品表示法第36条第1項に基づく公正競争規約が、不当表示として挙げている例である。
  • 「天然」「純」系には条件句がなく、「最高級」系には「客観的な根拠に基づかないで」という条件が付く。
  • 袋を選ぶ際は禁止語の有無より、産地・精製方法・焙煎度の記載を確かめると判断の目安になる。

この記事は「コーヒー豆を知る完全ガイド|産地・品種・精製・焙煎でわかる味の地図」の各論です。

目次

棚を見渡すと、食品ではよく見る言葉がコーヒーの袋には少ない

スーパーの棚を歩くと、菓子や飲料の袋には「濃厚」「本格」「特選」のような言葉が普通に並んでいる。ところがコーヒーの袋を手に取ると、同じ調子の言葉が意外と少ないことに気づく人もいるだろう。ハンドドリップを始めて数年経つと、豆の品種や精製方法(ナチュラル・ウォッシュト・ハニープロセスなど)には詳しくなっても、パッケージの文言そのものを気にする機会は少ない。

表示が少ないのは偶然ではない

コーヒーの表示が慎重なのは、業界の慣例というより、公正競争規約という業界内の自主ルールが具体的な禁止語を挙げているためである[1]。この規約はレギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーを対象にしたものと、コーヒー飲料等を対象にしたものとで別に存在する[1][2]。棚で見かける表示の温度差は、まずこの制度の存在を知ることで説明がつく。

読者にとっての実利

この制度を知っておくと、豆を選ぶときに「最高級」という言葉そのものに反応するのではなく、産地・精製方法・焙煎度といった具体的な情報を見る習慣がつきやすい。表示の制約を理解することは、パッケージの言葉を鵜呑みにしないための下地になる。

深掘りメモ|表示規制の存在自体が持つ意味

規約が禁止語を列挙しているという事実は、業界側が「言葉だけで優良さを演出できてしまう」余地を自覚してきたことの裏返しでもある。表示欄の情報量が少ないコーヒーほど、産地や精製方法の記載を確認する価値が相対的に高くなる。

例示されている言葉(天然・自然・純・純正・ピュアー/生・フレッシュ/特上・特選・最高級/超・究極)

レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約の施行規則第4条は、規約第6条各号に当たる不当表示の例を具体的に示している[1]。そこに列挙されている言葉を並べると、傾向がはっきり見えてくる。

「天然・自然・純・純正・ピュアー」系の言葉

施行規則は「『天然』、『自然』、『純』、『純正』、『ピュアー』等の用語」を、規約第6条第5号(製法・品質・成分・原材料が実際のものより優良であるかのように誤認されるおそれのある表示)に当たる例として挙げている[1]。「生」「フレッシュ」等の新鮮さを意味する文言も同様に、この号の例として並記されている[1]。

「特上・特選・最高級・超・究極」系の言葉

これらは規約第6条第7号に対応する例として整理されている。第7号が禁じているのは「客観的な根拠に基づかないで『特上』、『特選』、『最高級』等の文言を用いることにより、当該商品が特に優良であるかのように誤認されるおそれがある表示」で、施行規則第4条はその例として「『超』、『究極』等の最上級を意味する文言の表示」を挙げている[1]。

以下は規約第6条と施行規則第4条の例示を整理した表である(「特上」「特選」「最高級」は規約第6条第7号の本文、「超」「究極」は施行規則第4条の例示)。

カテゴリ例示語対応する規約条項
純粋さ・自然さを示す語天然、自然、純、純正、ピュアー規約第6条第5号
新鮮さを示す語生、フレッシュ規約第6条第5号
最上級を示す語特上、特選、最高級、超、究極規約第6条第7号

二つの系統は同じ号の話ではない

表を見ると、「天然・純・生」系と「特上・最高級・超」系は、同じ規約に属していても異なる号(第5号と第7号)に対応している。前者は製法・品質・成分・原材料が実際より優良と誤認されるおそれの話であり、後者は「客観的な根拠に基づかないで」という条件が付いた最上級表現の話である。この違いは次の章の核心につながる。

「客観的な根拠に基づかないで」という前置きを落とさない

条件句の有無で分かれる2系統 規約第6条の例示語を、第5号の「天然・純・生」系と第7号の「特上・最高級」系に分け、対応する号・条件句・誤認の対象・読み方で対比する。第7号の例示にだけ「客観的な根拠に基づかないで」という前置きが付く。 Fig. Compare 条件句の有無で分かれる2系統 施行規則第4条の例示を条件で読む 「最高級と書けない」という要約は正確ではない 観点 天然・純・生 系 特上・最高級 系 対応する号 規約第6条第5号 規約第6条第7号 条件句 付いていない 客観的な根拠に基づかないで 誤認の対象 製法・品質・成分・原材料 特に優良であるかのように 読み方 端的に例として並ぶ 根拠を伴う表示は別扱い 本文「『客観的な根拠に基づかないで』という前置きを落とさない」。条件節を落とすと意味が変わる。 出典: レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約・施行規則(令和6年10月1日施行) 図解:coffee-pick.com

規約第6条第7号の例示には、「客観的な根拠に基づかないで」という前置きがついている[1]。この一句を読み飛ばすと、「最高級」という言葉そのものが常に禁止されていると誤解してしまう。実際にはそうではない。

条件つきの禁止であること

条文をそのまま引くと、規約第6条第7号は「客観的な根拠に基づかないで『特上』、『特選』、『最高級』等の文言を用いることにより、当該商品が特に優良であるかのように誤認されるおそれがある表示」であり、施行規則第4条はその例示として「『超』、『究極』等の最上級を意味する文言の表示」を挙げている[1]。つまり禁止されているのは、根拠を伴わずに最上級表現を使うことによって優良性の誤認を招く場合である。根拠を示せる場合と、根拠なく誤認を生む場合は、規約の建て付け上、別のものとして扱われている。

「天然」「純」系にはこの前置きがない

一方、「天然」「自然」「純」「純正」「ピュアー」や「生」「フレッシュ」については、施行規則の例示に「客観的な根拠に基づかないで」という限定句は付いていない[1]。第5号は製法・品質・成分・原材料についての誤認可能性を対象とする号であり、これらの語は端的に例として並べられている。条件の有無という一点だけでも、二つの系統の扱いには違いがある。

読者が実務で受け取るべき視点

淹れ手として袋の表示を見るときは、「最高級」という言葉があるかないかではなく、その言葉の裏に産地・品種・精製方法・カッピング評価のような具体的な情報が伴っているかを見る習慣が実務的である。根拠が示されている表示と、言葉だけが浮いている表示を区別する視点は、規約の条文構造そのものから来ている。

  • 客観的根拠を伴う最上級表現は、規約上の建て付けとして根拠なき表示とは別に扱われる
  • 「天然」「純」系の語は、そもそも第5号の誤認可能性の例として挙げられている
深掘りメモ|条件節を落とすと意味が変わる

「最高級と書けない」という要約は正確ではない。規約が問題にしているのは「客観的な根拠に基づかないで」用いる場合であり、この一句を落として要約すると、規約の対象がすべての最上級表現に広がったかのように読めてしまう。

コーヒーでないものに「コーヒー」と書けない

規約第6条第1号は「コーヒーでないものについて、コーヒーであるかのように誤認されるおそれがある表示」を禁じている[1]。施行規則第4条はこの号の例として、タンポポ、大豆、玄米等を原材料としているものについてのコーヒー等の表示を挙げている[1]。

タンポポコーヒー・大豆コーヒー・玄米コーヒーの位置づけ

タンポポの根を焙煎して作られる飲料や、大豆・玄米を原料とする飲料は、それ自体として飲用されてきた歴史のある嗜好品である。ここで規約が問題にしているのは、これらの飲料の質そのものではなく、コーヒー豆(コーヒーノキの種子)を原材料としていないものに「コーヒー」という名称を用いることで、消費者がコーヒー豆由来の飲料だと誤認するおそれがある、という表示上の点に限られる[1]。タンポポコーヒーが体に悪いという話ではなく、名称と原材料の対応関係についての規定である。

定義に合致しない名称も対象になる

規約第6条第2号はさらに、第2条第1項から第4項までの規定で定義するコーヒーについて、定義に合致しない名称で、かつ、一般消費者を誤認させるおそれがある表示を禁じている[1]。原材料がまったく異なるものだけでなく、定義上コーヒーに当たらないものに近似した名称をつける場合も同様に扱われる。

産地・銘柄・配合割合の誤認も同じ枠組み

規約第6条は、第3号でコーヒー生豆の生産国、産地、品種、銘柄等について、第4号でコーヒー豆の配合割合について、誤認されるおそれがある表示を禁じている[1]。名称だけでなく、産地表示や配合表示の精度についても同じ「誤認のおそれ」という基準で扱われている。

深掘りメモ|名称規制の対象範囲

この号が対象にしているのは原材料と名称の対応であり、代替飲料としての価値や味の評価とは別の話である。タンポポコーヒーや大豆コーヒーの需要が示すように、コーヒー豆を使わない焙煎飲料には独自の市場があり、規約はその存在自体を問題にしていない。

飲料の側にも似た列があるが、挙がる語は違う

レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの規約とは別に、コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約が存在する[2]。缶コーヒーやペットボトルのコーヒー飲料はこちらの規約の対象になる。両者は似た枠組みを持ちながら、実際に例示されている語は一致しない。

缶コーヒー等の規約が挙げる語

この規約の施行規則には、ベスト・極上・最高級等の表示、濃厚等の表示、ストロングの表示、本格コーヒー・本格派の味・本場等の表示が並んでいる[2]。さらに、客観的根拠に基づかない天然・自然・生・新鮮・フレッシュ等の表示、純・純粋・純良・ピュアー等の表示も別項として挙げられている[2]。

二つの規約の語を並べて見る

以下は二つの規約で例示されている語を整理したものである。

規約対象商品例示されている語
レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約豆・粉・インスタントコーヒー天然、自然、純、純正、ピュアー、生、フレッシュ、特上、特選、最高級、超、究極
コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約缶・ペットボトル等のコーヒー飲料ベスト、極上、最高級、濃厚、ストロング、本格コーヒー、本格派の味、本場、天然、自然、生、新鮮、フレッシュ、純、純粋、純良、ピュアー

なぜ語がそろっていないのか

「天然」「純」「フレッシュ」系の語は両方の規約に共通して現れる一方、「ベスト」「極上」「濃厚」「ストロング」「本格」「本場」といった語は、コーヒー飲料等の規約側にのみ例示されている[2]。これは商品特性の違いを反映したものと見るのが自然である。缶コーヒーやペットボトル飲料は味の濃さや飲みごたえを訴求する表示が多いため、規約側もその領域に対応する語を具体的に挙げていると考えられる。

  • 「天然」「純」系の語は、豆・粉の規約とコーヒー飲料の規約の両方に共通して現れる
  • 「ベスト」「濃厚」「ストロング」「本格」系の語は、コーヒー飲料等の規約にのみ例示されている
深掘りメモ|商品形態と例示語の対応

二つの規約で例示語が異なるのは、規約が想定する購買時の判断材料が商品形態によって違うことを示している。缶コーヒーは味の濃さや力強さを言葉で訴求しやすい商品であり、その分「濃厚」「ストロング」のような語が具体的に列挙される必要が生じたと考えられる。

根っこにある法律と、規約が自らに課す歯止め

これら二つの規約は、景品表示法第36条第1項に基づいて設定されている[1][2]。レギュラーコーヒーの規約第6条は、品質を実際より優良に見せる表示だけでなく、原産国の誤認(第6号)や他社の中傷(第11号)なども禁じている[1]。

景品表示法第5条第1号の条文

条文は次のように定めている。事業者は、商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものをしてはならない[3]。この条文は「著しく優良であると示す表示」という部分だけで終わらず、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの」という条件節まで続いている。おそれ要件を含めて読むかどうかで、条文が指す範囲の向きが変わる。

規約は景品表示法の枠組みのもとで設定される

「天然」「純」「最高級」の禁止は、第5条第1号が定める「著しく優良であると示す表示」と同じ向きの規制である。ただし、規約がその条文を語ごとに書き下したものだとは、規約自身も法律の本文も書いていない。景品表示法そのものは個別の商品や語を指定しておらず、業界ごとの公正競争規約が、同法第36条第1項の仕組みのもとで具体的な表示の基準を定めている[1][3]。

規約が自らに課している歯止め

規約は禁止語の列挙だけでなく、事業者自身の行動を抑制する規定も持っている。コーヒーについて、賞でないものが賞であるかのように誤認されるおそれがある表示や、自己の取り扱う他の商品・他の事業について受けた賞・推奨等が当該商品について受けたものであるかのように誤認されるおそれがある表示も、規約第6条の禁止対象に含まれている[1]。他の事業者の商品や事業についての中傷・ひぼうを禁じる規定も、同じ規約の枠組みの中に置かれている。誤認を招く自己評価と、他社への攻撃という二方向の歯止めが、規約の中に組み込まれている。

深掘りメモ|一般条項と個別規約の関係

景品表示法第5条第1号は抽象的な基準を定め、公正競争規約は同法第36条第1項に基づいて業界ごとに具体的な表示の基準を定めている。コーヒーの表示規制を理解するには、条文の抽象的な基準と、規約の具体的な語の両方を合わせて見る必要がある。

結論

コーヒーの袋の「天然」「純」は、公正競争規約の施行規則が規約第6条第5号の不当表示に当たる例として挙げ、「最高級」は、規約第6条第7号が客観的な根拠に基づかないで用いて特に優良であるかのように誤認されるおそれがある場合に禁じている[1]。「天然」「純」系の語には条件句がなく、「最高級」系の語には「客観的な根拠に基づかないで」という条件が付く。この違いを踏まえると、袋の表示は禁止語の有無で判断するものではなく、根拠の有無で読み分けるべきものだと分かる。次に豆を選ぶときは、パッケージの形容詞よりも、産地・精製方法・焙煎度といった具体的な記載を先に確認する習慣を持つとよい。表示制度そのものについてさらに詳しく知りたい読者は、コーヒーの銘柄名は「どこで採れたか」で決まっているも参考になる。

参考文献

  1. レギュラーコーヒー及びインスタントコーヒーの表示に関する公正競争規約及び同施行規則(令和6年10月1日施行)
    https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/b05_H_coffee.pdf
  2. コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約及び同施行規則
    https://www.jfftc.org/DATA/Kiyaku_pdf/b03_H_cancoffee.pdf
  3. 不当景品類及び不当表示防止法(昭和37年法律第134号)/e-Gov法令検索
    https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000134

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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