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喫茶代が多い街は、コーヒーが高い街か|52市で並べると、喫茶代の順位と1杯の値段の順位はほとんど対応しない

喫茶代が多い街は、コーヒーが高い街か|52市で並べると、喫茶代の順位と1杯の値段の順位はほとんど対応しない

喫茶代の多さと、喫茶店のコーヒー1杯の値段は、別々の統計が別々のものを数えた数字であり、片方が多い街がもう片方も高いとは限らない。家計調査(二人以上の世帯、2023〜2025年平均)では、喫茶代は名古屋市16,431円が1位、東京都区部16,270円が2位である[1]。

喫茶代と、喫茶店の一杯の値段は別の物差し 喫茶代、喫茶店のコーヒーの値段、家のコーヒー、喫茶店の数という物差しを本文の順に並べた図。喫茶代は家計調査の値で、世帯が年間に支払った金額の平均であり、飲物・菓子・果物の外食を含み、喫茶店に限らない。喫茶店のコーヒーの値段は小売物価統計調査の値で、決まった条件のコーヒーの、一杯あたりの価格である。名古屋市は喫茶代は多いが一杯は安いほうに入り、東京都区部は喫茶代も一杯の値段も上位にくる。家で使うコーヒーとコーヒー飲料は、同じ家計調査でも上位にくる市が別である。喫茶店の数は都道府県単位で、市単位の喫茶代とは範囲がそろっていない。 Fig. Compare 喫茶代と、喫茶店の一杯の値段は別の物差し 片方が多い街が、もう片方も高いとは限らない 喫茶代の順位だけから、一杯の値段の順位を言い当てることはできない ①喫茶代 家計調査 何を数えているか 世帯が年間に支払った金額の平均 飲物・菓子・果物の外食(喫茶店に限らない) 複数年をならした値 ②喫茶店のコーヒーの値段 小売物価統計調査 何を数えているか 決まった条件のコーヒーの、一杯あたりの価格 セルフサービス店・アイスコーヒー・持ち帰りは除く 単年の年平均 本文が並べる街の例 名古屋市:喫茶代は多いが、一杯は安いほうに入る 東京都区部:喫茶代も一杯の値段も上位にくる ③家のコーヒー 家で使うコーヒー(豆・粉・インスタントなど)とコーヒー飲料 同じ家計調査でも、上位にくるのは別の市 ④喫茶店の数 都道府県ごとの喫茶店数と、一店舗当たりの人口 都道府県単位で、市単位の喫茶代とは範囲がそろっていない 並びは本文の物差しの順。金額と順位は本文の表を参照 当サイトによる整理(本文の構造を図にしたもの) 図解:coffee-pick.com
目次

喫茶代の多い街と、コーヒーが高い街は同じではない

名古屋市と東京都区部がまず目立つ

総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング、2023〜2025年(令和5〜7年)平均の外食部門によると、喫茶代の上位は名古屋市16,431円、東京都区部16,270円の順である[1]。ただしこの数字が示しているのは、世帯が1年間に喫茶代として支払った金額の平均であり、1杯あたりの単価ではない。

「喫茶代」と「1杯の値段」は別の統計

喫茶代の順位を見て、その街の喫茶店のコーヒーが高いと早合点したくなるが、喫茶代は家計調査、1杯の値段は小売物価統計調査という別の調査で作られている。前者は世帯が1年間に支払った額の合計であり、後者は決まった条件のコーヒー1杯の価格を市ごとに調べたものである。数える対象も、数える単位も違う2つの統計を同じ土俵に乗せて比べるには、まずそれぞれが何を数えているかを押さえておく必要がある。

「喫茶代」と「喫茶店のコーヒー1杯」は何を数えているか

家計調査の喫茶代の定義

家計調査の収支項目分類表では、喫茶代は「飲物(酒類は除く。)、菓子及び果物の外食。」と定義されている[5]。この定義には次の特徴がある。

  • コーヒー以外の飲み物(紅茶やジュースなど)も含まれる
  • 菓子や果物を外で食べた分も含まれる
  • 喫茶店という業態に限らず、飲食の場を問わない

つまり喫茶代は「喫茶店で払ったお金」ではなく、飲物・菓子・果物の外食全般を合計した金額である。ある市の喫茶代が多いからといって、その中身がコーヒーだけだとは限らない。

小売物価統計調査のコーヒー(外食)の基本銘柄

小売物価統計調査の銘柄符号2162「コーヒー(外食)」の基本銘柄は、「喫茶店(セルフサービス店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー,アイスコーヒーは除く,持ち帰りは除く」とされ、単位は1杯である[4]。条件がかなり絞られていることが分かる。セルフサービス店やコーヒースタンド、アイスコーヒー、持ち帰りはこの銘柄には含まれない。

セルフサービス店のコーヒーは別の銘柄で調べられている

セルフサービス店のコーヒーは、銘柄符号2165として別に調べられている。基本銘柄は「セルフサービス店(ファーストフード店及びコーヒースタンドを除く)におけるコーヒー(アイスコーヒーを除く),小サイズ,持ち帰りは除く」である[4]。本記事で扱う「喫茶店のコーヒー1杯」は2162の値であり、2165のセルフサービス店の値とは別の数字として読む必要がある。

深掘りメモ|2つの統計の射程

喫茶代は飲物・菓子・果物の外食全体を合計した支出額で、1杯の値段は喫茶店(セルフサービス店を除く)のコーヒー限定の価格である[4][5]。対象の範囲がそもそも異なるため、順位が揃わないこと自体は不自然ではない。

全52市の喫茶代と1杯の値段(表1)

表の読み方

以下の表1は、総務省統計局の家計調査ランキングと小売物価統計調査の価格表から、全52市を喫茶代の多い順に並べたものである。喫茶代の列は2023〜2025年の3年平均(二人以上の世帯)の値であり[1]、1杯の値段の列は小売物価統計調査の2025年の年平均価格である[3]。2つの列は時点がそろっていない点に注意して読む必要がある。喫茶代は3年をならした値、1杯の値段は単年の値であり、同じ「2025年」を指しているわけではない。

【表1:全52市の喫茶代と1杯の値段】

喫茶代の順位市喫茶代(円・2023〜2025年平均)喫茶店のコーヒー1杯(円・2025年の年平均)1杯の値段の順位(2025年・52市中)
1名古屋市16,43146337
2東京都区部16,2706131
3岐阜市14,66346139
4さいたま市13,94142646
5千葉市12,89947434
6川崎市12,88150517
7横浜市12,76550815
8京都市12,7585663
9相模原市12,3255476
10奈良市11,66845441
11岡山市11,47751612
12大津市10,89148430
13大阪市10,82744843
14神戸市10,62549026
15甲府市10,26449620
16宇都宮市10,22442447
17高松市10,18436752
18仙台市10,0275515
19静岡市9,98248131
20金沢市9,78949323
21富山市9,66649421
22堺市9,57545242
23広島市9,54149421
24徳島市9,27252311
25長野市8,97146238
26水戸市8,86449323
27山形市8,72950616
28和歌山市8,56346836
29福岡市8,37450218
30北九州市8,20247533
31福井市8,20049125
32佐賀市8,1755437
33浜松市8,07749026
34鳥取市7,99741248
35新潟市7,87052710
36松江市7,7765634
37大分市7,70448728
38津市7,54747035
39前橋市7,52448529
40福島市7,51538051
41高知市7,48244244
42札幌市7,4565359
43山口市7,41251014
44熊本市7,2965378
45長崎市7,26751413
46鹿児島市7,23138850
47盛岡市7,11245940
48宮崎市6,9016102
49松山市6,68149719
50那覇市6,31341149
51秋田市6,02742845
52青森市4,62647832

出典:喫茶代は総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年(令和5年)〜2025年(令和7年)平均)」の外食の表[1]。喫茶店のコーヒー1杯は総務省統計局「小売物価統計調査(動向編)」2025年 結果表 第1表【14】の銘柄符号2162の年平均価格(e-Stat 統計表ファイル statInfId 000040446325)[3]。どちらも取得日は2026-10-13。

注:1杯の値段の順位は、2025年の年平均価格を52市で高い順に並べた編集部の計算である(同じ値段の市は同じ順位)。喫茶代は3年の平均、1杯の値段は2025年の1年の値で、時点はそろっていない。

喫茶代が多い街の1杯は高いか

名古屋市・東京都区部・岐阜市・青森市で並べる

喫茶代1位の名古屋市の喫茶店のコーヒー1杯は、2025年の年平均価格で463円である[3]。喫茶代2位の東京都区部は613円で、これは2025年の52市の中で最も高い値である[3]。一方、喫茶代が最も少ない青森市の1杯は478円であり[3]、喫茶代が最も多い名古屋市の463円より高い。喫茶代3位の岐阜市の1杯は461円で、名古屋市よりさらに安い[3]。

市喫茶代の順位(2023〜2025年平均)1杯の値段(円、2025年平均)1杯の値段の順位(2025年・52市中)
名古屋市1位46337位
東京都区部2位6131位
岐阜市3位46139位
青森市52位47832位

数値と順位は表1と同じである。1杯の値段の順位は編集部の計算。

この4市を並べると、東京都区部のように喫茶代も1杯の値段も上位にくる街がある一方で、名古屋市のように喫茶代は多いが1杯は安いほうに入る街もある。喫茶代の順位だけから、1杯の値段の順位を言い当てることはできない。

52市を並べると、喫茶代の順位と1杯の値段(2025年の年平均)の順位の相関は0.06である(スピアマンの順位相関係数。1に近いほど2つの順位がそろい、0に近いほど対応が無い。編集部の計算)。喫茶代の上位10市のうち、1杯の値段でも上位10位以内に入るのは東京都区部・京都市・相模原市の3市で、名古屋市・岐阜市・さいたま市・千葉市・奈良市の5市は1杯の値段が27位以下(52市の下半分)である(表1から編集部が数えた)。喫茶代の差は、そのまま1杯の値段の差としては読めない。何回払ったか、何を頼んだかという内訳は、この品目別ランキングの表と小売物価統計調査からは分からない。

1杯の値段は何店の価格から作られるか

小売物価統計調査のはなし(2026年版)によれば、店舗間で価格差がみられる品目(B品目)の1市あたりの価格取集数は、東京都区部21、大阪市12、横浜市・名古屋市・京都市・神戸市6であり、札幌市・仙台市・さいたま市・千葉市・川崎市・広島市・福岡市・北九州市の8市は4、新潟市など6市と、そのほかの県庁所在市・相模原市は3とされる[7]。喫茶店のコーヒー(2162)はこのB品目にあたる[4][7]。つまり各市の年平均価格は、その市の喫茶店全体を調べた平均ではなく、市ごとに決まった数の価格から作られた値である。

深掘りメモ|価格取集数の違い

東京都区部のB品目の価格取集数21は、多くの県庁所在市の3と比べて多い[7]。同じ「1杯の値段」でも、もとになる価格の数は市によって違う。

家で淹れる街・喫茶店の数と並べる

家で使うコーヒーとコーヒー飲料の支出・購入量

同じ家計調査の品目別ランキング(飲料、2023〜2025年平均)では、家で使う「コーヒー」(豆・粉・インスタントなど)の支出は大津市10,396円が1位、京都市10,149円が2位である[2]。購入数量では京都市3,265gが1位、金沢市3,259gが2位である[2]。家計調査の「コーヒー」は豆に限らず、粒・挽いた粉末・インスタントなど固体の形状のものを含む品目であり[5]、数量(グラム)は重さを示す値であって杯数に換算されるものではない。液体の「コーヒー飲料」では、青森市7,545円が1位、富山市7,199円が2位である[2]。喫茶代の1位・2位だった名古屋市・東京都区部とは、顔ぶれがまったく違う。

  • 家で使うコーヒー(支出):大津市1位、京都市2位[2]
  • 家で使うコーヒー(購入数量):京都市1位、金沢市2位[2]
  • コーヒー飲料(支出):青森市1位、富山市2位[2]

喫茶代が多い街と、家で使うコーヒーやコーヒー飲料への支出が多い街は、同じ家計調査のランキングでも別の市が上位にくる。

喫茶店の数と人口を並べる

全日本コーヒー協会の統計資料は、店舗数を総務省「令和3年経済センサス-活動調査」、人口を総務省「令和4年1月1日住民基本台帳」として、1店舗当たりの人口が最も少ないのは高知県、岐阜県、和歌山県の順であるとしている[6]。同じ資料では、都道府県別の事業所数は大阪府、愛知県、東京都の順に多いとされる[6]。協会の資料はこれに続けて「1店舗当たりの人口が少ない県は、住民の喫茶店利用度が高いものと推測される」と注記している[6]。この注記は協会自身の見方として引用するにとどめる。なお、この店舗数のデータは都道府県単位、喫茶代のデータは市単位であり、範囲がそろっていない点は区別して読む必要がある。

結論:順位は年によって動く、次にできること

ランキングは3年平均で作られている

総務省統計局の品目別ランキングは、単年の数字ではなく2023〜2025年のように3年分をならした平均で作られている[1][2]。単年の順位だけを切り出して語ると、たまたまその年だけ上がった・下がった動きを恒常的な傾向と取り違えやすい。3年分を平均した値は、単年の値より年ごとの動きがならされる。

家計調査の年次の値(統計表ID 0004023605・二人以上の世帯)を編集部が単年で並べると、52市の中で喫茶代がいちばん多かったのは、2023年が岐阜市、2024年が東京都区部、2025年が名古屋市だった。3年のあいだに1位が毎年入れ替わっている。

自分の市を表1で引く

読者が次にできることは、まず自分の住む市(または近い市)を表1で引き、喫茶代の順位と1杯の値段の順位を別々に確認することである。

  • 喫茶代は「世帯が払った合計額」であり、1杯の値段は「決まった条件(喫茶店・ホット・持ち帰りなし)の1杯」であると読み分ける
  • 総務省統計局の品目別ランキングは3年平均で公表されているので、新しい年の版が出たら見直す

喫茶店の値段が2020年以降どのように動いたか、家計のコーヒー支出と喫茶店の軒数の推移、家でのコーヒーとコーヒー飲料が月ごとにどう入れ替わるか、喫茶店という場そのものの歴史は、それぞれの記事で確認できる。喫茶代と1杯の値段を混同せずに読み分けることが、この2つの統計を正しく使う最初の一歩になる。

参考文献

  1. 家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年(令和5年)~2025年(令和7年)平均)外食/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kakei/zuhyou/rank13.xlsx
  2. 家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2023年(令和5年)~2025年(令和7年)平均)飲料/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kakei/zuhyou/rank11.xlsx
  3. 小売物価統計調査(動向編)2025年 結果表 第1表 調査品目の月別価格及び年平均価格【都道府県庁所在市及び人口15万以上の市】【14】「2135 ハンバーガー(外食)」~「2183 学校給食」/総務省統計局
    https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040446325
  4. 小売物価統計調査(動向編)調査品目及び基本銘柄(2026年10月調査)/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kouri/doukou/zuhyou/202610.xlsx
  5. 家計調査 2025年 年報 付録8 収支項目分類表(内容例示つき)/総務省統計局
    https://www.stat.go.jp/data/kakei/2025np/pdf/fr8.pdf
  6. 都道府県別 喫茶店数、一店舗当たりの人口(店舗数:総務省「令和3年経済センサス-活動調査」、人口:総務省「令和4年1月1日住民基本台帳」)/全日本コーヒー協会 統計資料
    https://coffee.ajca.or.jp/wordpress/wp-content/uploads/2025/08/data-kenbetsu-tenpo20230907.pdf
  7. 小売物価統計調査のはなし(2026年版)/総務省統計局(2026年7月)
    https://www.stat.go.jp/data/kouri/handbook/pdf/hanashi_2026.pdf

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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