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コーヒー生産者の取り分は何%か|世界価格に対する割合と、小売の金額に対する割合を分けて読む

コーヒー生産者の取り分は何%か|世界価格に対する割合と、小売の金額に対する割合を分けて読む

「生産者の取り分」は何を何で割ったかによって別の数字になり、世界価格に対する割合と小売の金額に対する割合は、同じ時期に逆向きに動いた[1][2]。分母を世界価格(輸出段階)、小売の金額、カフェの1杯の順に分けて確認し、なぜ逆方向に動くのかと、数字を読むときの確認点を並べて示す。

この記事の結論
  • コーヒー生産者の取り分は何を何で割ったかで別の数字になり、世界価格比と小売比は同じ時期に逆向きに動いた。
  • FAOの論考は、小売価格に占める生産者の割合をおそらく20〜30%、コーヒーショップの1杯では1〜2%とする。
  • 読むときの要点は分子・分母・年・推計元の4点で、前提の違う割合は同じ基準で比べられない。
目次

分母①世界価格(輸出段階)に対する生産者の取り分

流通改革の前後で変わった長期の割合

世界銀行の政策研究ワーキングペーパーとしてKrivonosが2004年に発表した分析は、1980年代後半から1990年代前半にかけてコーヒー流通の改革が進んだ国々について、生産者価格が世界市場価格に占める長期の割合(ターゲットシェア)を改革前と改革後で比較している[1]。ウガンダでは0.32から0.91へ、エチオピアでは0.40から0.73へと上昇し、インドではアラビカ・ロブスタともにおよそ0.56から、それぞれ0.69・0.85へ上昇したと報告されている[1]。短期の価格伝達(世界価格の変化がどれだけ速く生産者価格に伝わるか)は、すべての場合で変わらないか改善したとされる[1]。

下がった国は限られていた

同じ分析でタンザニアだけは0.56から0.53へと低下したが、この差は10%水準でのみ統計的に有意とされている[1]。この長期の割合は、ICOが約20の輸出国について過去20年にわたって集めた月次の世界価格と、各国当局がICOに報告した農家庭先価格をもとに推計されたものであり、ある特定の年の実測値ではなく、期間を通じた長期的な傾向として読む必要がある[1]。Krivonos自身も、価格が上がる方向と下がる方向とで世界価格の伝わり方に非対称性がある証拠を認めている[1]。

国による開きの具体例

同じ論文は、生産者価格の割合は、輸出の仕組みが似て見える国どうしでも大きく違うと書いている[1]。1998/99年にタンザニアの生産者が受け取ったのは、アラビカの輸出価格の42%、ロブスタの輸出価格の30%にとどまったのに対し、同じ時期のウガンダでは生産者がロブスタの輸出価格の75%を受け取っていたと、Krivonosは他の研究を引用する形で示している[1]。

国改革前の割合改革後の割合
ウガンダ0.320.91
エチオピア0.400.73
インド(アラビカ)約0.560.69
インド(ロブスタ)約0.560.85
タンザニア0.560.53
深掘りメモ|世界価格ベースの割合の読み方

この表の数値は長期の推計値であり、1998/99年のタンザニア・ウガンダの事例のような単年の受取率とは分母・期間の取り方が異なる。両者を同じ表に並べて大小を比べることは、推計の前提が違うため避けたほうがよい[1]。

分母②小売の金額に対する生産国・生産者の取り分

輸出収入と小売販売額の対比

ICO事務局長が2004年6月に第11回UNCTAD総会へ提出した文書は、生産国の輸出収入(FOB=本船渡し価格)と消費国の小売販売額を対にして示している[2]。1980年代後半から1990年代の一時期にかけて、生産国の輸出収入は年100〜120億ドルほどであったが、その後およそ55億ドルへ下がったとされる[2]。これに対し、消費国の小売販売額は1980年代の約300億ドルから、現在(2004年時点)約800億ドルへと成長を続けたと記されている[2]。この文書が示すのは2つの金額の対であって、両者を単純に割って割合に換算した数値は原文には書かれていない。輸出収入の時期の表現(1980年代後半から1990年代の一時期)と、小売販売額の時期の表現(1980年代から現在)がわずかに異なる点も、原文のまま読む必要がある[2]。

FAOが示す小売価格に占める割合

FAOの『Commodity Market Review 2003-2004』に収められたHallamの論考は、生産者の受け取る価格が下がるあいだも流通の利幅は保たれたとみられ、最終小売価格に占める生産者の割合が縮小したと述べている[3]。この割合はもともと小さく、コーヒーの小売価格のおそらく20〜30%だったと論考は記している[3]。FAOは同時に、生豆は最終製品を構成する一要素に過ぎず、加工・輸送・サービスの費用が小売価格に含まれていることも説明している[3]。

1995年の価格内訳という一時点の断面

Fitter & Kaplinsky(2001年)は、1995年時点の価格内訳を図示し、スーパーマーケットで販売される最終製品の価格のおよそ40%が途上国側に残っていたと報告している[4]。著者らはこの数値が特定の時点の断面であることを明記しており、1985年以降は輸入国側の取り分が増える傾向にあったとも述べている[4]。この40%という数字はFAOが示す20〜30%とは、分子(途上国に残る分か、生産者の受取か)・算出方法・対象(スーパーマーケット向けの製品か、コーヒーの小売価格か)が異なるため、どちらが正しいというより、資料によって前提が異なる数値として並べて読むのが妥当である[3][4]。

指標数値年出典
生産国の輸出収入(FOB)年100〜120億ドル→約55億ドル1980年代後半〜90年代一時期→2004年時点ICO事務局長[2]
消費国の小売販売額約300億ドル→約800億ドル1980年代→2004年時点ICO事務局長[2]
小売価格に占める生産者の割合おそらく20〜30%年次の記載なし(2003-2004年版)FAO[3]
最終製品価格に占める途上国側の割合約40%(1995年の断面)1995年Fitter & Kaplinsky[4]
深掘りメモ|金額の対と割合の違い

ICOの資料は輸出収入と小売販売額という2つの金額を並べて示すのみで、そこから生産者の取り分を割合として計算した数値は原文に無い[2]。割合として読みたい場合は、別の分母を使ったFAOやFitter & Kaplinskyの推計を当てる必要があり、両者を混ぜて1つの割合のように扱うと分母が食い違う。

分母③カフェの1杯に対する生産者の取り分

1〜2%という数字の位置づけ

同じFAOの論考は、コーヒーショップで売られる1杯のコーヒーの価格に占める生産者の割合を、1〜2%にすぎないとしている[3]。この数字は前章で見た小売価格に占める20〜30%という割合とは、分母が異なる。20〜30%はコーヒーの小売価格、1〜2%はコーヒーショップの1杯の価格に対する割合であり、同じ「小売」という言葉で括ることはできない。

生豆は最終製品の一要素

FAOの論考は、生豆は最終の小売製品を構成する一要素に過ぎず、そこには加工・輸送・サービスなどの費用と、各段階の企業が取る利幅が含まれると説明している[3]。世界銀行のLewinらも、賃金・包装・販売といったコーヒー以外の費用が、小売価格のなかでコーヒーそのものよりずっと大きな割合を占めるようになったと書いている[5]。

家庭用の豆とカフェの1杯を分けて読む

店で豆を買って家で淹れる場合に近いのは、前章で見た小売価格に占める割合(FAOの論考ではおそらく20〜30%)のほうで、カフェの1杯に占める1〜2%という割合とは別の数字である[3]。どちらも「生産者の取り分が小さい」という方向では共通するが、分母がまったく異なる2つの数値を同じ基準で比較することはできない。

なぜ逆に動くのか

焙煎・小売側の価値付加

世界銀行のLewin、Giovannucci、Varangisによる2004年の報告書は、コーヒー価格の下落の結果として、最終小売価格のうち生産国が受け取る割合が低下したとし、その背景に2つの要因があると説明している[5]。第一に、焙煎業・小売業の側が新製品の開発やブランド化、差別化といった価値付加の活動によって利益を上げてきたことが挙げられている[5]。

コーヒー以外の費用の増大

第二の要因として、賃金・包装・販売といった、コーヒーの原料そのものとは別の費用が小売価格のなかで大きな比重を占めるようになったことが挙げられている[5]。この報告書は、生産者の取り分の変動が、こうした付加価値に関わる費用よりも、生豆そのものの価格水準の変化に左右されやすいと説明している。これは付加価値に関わる費用がコーヒー豆の市場価格とは独立に動くためである[5]。

2つの要因を分けて読む意味

焙煎・小売側の価値付加とコーヒー以外の費用の増大という2つの要因は、どちらも小売価格に占める生産者の取り分を小さくする方向に働くが、それぞれ性質が異なる。前者は焙煎・小売の側が上げる利益の話、後者は小売価格に含まれるコーヒー以外の費用の話である。報告書は、生豆の価格は焙煎コーヒーを店頭に並べるまでの費用のなかで最も変動が大きく、生産国の取り分の変化を決める主な要因の1つだとも書いている[5]。

深掘りメモ|生豆価格と小売価格の独立性

付加価値に関わる費用が生豆の市場価格と独立に動くという指摘は、生豆が安くなっても小売価格やカフェの1杯の値段がそれに比例して下がるとは限らないことを意味する[5]。生産者の取り分を考えるときは、小売側の費用構造も合わせて見る必要がある。

読むときの確認点

取り分の数字を分子と分母で分ける 生産者の取り分の数字を、分母ごとに分子・年・推計元で並べた表。分母①世界価格は分子が生産者の庭先価格で推計元はKrivonos・世界銀行。分母②小売の金額は分子が3つあり、生産国の輸出収入(ICO事務局長・2004年時点)、生産者の受取(FAO・年次の記載なし)、途上国に残る分(Fitter & Kaplinsky・1995年)。分母③カフェの1杯は分子が生産者の受取で推計元はFAO。 Fig. Table 取り分の数字を分子と分母で分ける 分子と分母の組み合わせが、数字ごとにそれぞれ異なっている。 分母 分子 年 推計元 ①世界価格 生産者の庭先価格 改革前後(1980年代後半〜 90年代前半が目安) Krivonos・世界銀行 ②小売の金額 生産国の輸出収入 2004年時点 ICO事務局長 ②小売の金額 生産者の受取 年次の記載なし FAO ②小売の金額 途上国に残る分 1995年 Fitter & Kaplinsky ③カフェの1杯 生産者の受取 年次の記載なし (FAOの2003-2004年版) FAO 本文「読むときの確認点」。年次も推計方法も資料によって異なり、大小を比較することはできない。 出典: Krivonos 2004/ICO ED 1922/04/FAO(Hallam)/Fitter & Kaplinsky 2001 図解:coffee-pick.com

分子と分母をそろえて見る

ここまで見た数字は、分子(農家の受取か、生産国全体の輸出収入か)と分母(世界価格か、小売価格か、カフェの1杯か)の組み合わせがそれぞれ異なっている。年次も推計方法も資料によって異なるため、1つの表にまとめて大小を比較することはできない。読むときに確認すべき点を整理すると次のようになる。

  • 分子は何か(農家の庭先価格か、生産国の輸出収入全体か)
  • 分母は何か(世界市場価格か、家庭用小売価格か、カフェの1杯の価格か)
  • その数値はどの年、あるいはどの期間のものか
  • 誰が推計したか(世界銀行、ICO、FAO、個々の研究者のいずれか)
確認項目分母①世界価格分母②小売の金額分母③カフェの1杯
分子生産者の庭先価格生産国の輸出収入(ICO)/生産者の受取(FAO)/途上国に残る分(Fitter & Kaplinsky)生産者の受取
年改革前後(1980年代後半〜90年代前半が目安)2004年時点(ICO)/1995年(Fitter & Kaplinsky)/年次の記載なし(FAO)年次の記載なし(FAOの2003-2004年版)
推計元Krivonos・世界銀行[1]ICO事務局長・FAO・Fitter & Kaplinsky[2][3][4]FAO[3]

不透明さが残る領域

ICOが2020年に公表した報告書は、農場から小売までの費用と利幅など、コーヒーの供給網の重要な特徴が不透明なままであると指摘している[6]。生産国における生活収入のギャップに関する評価も広く利用可能な状態にはないとされ、民間主導の取り組みも供給者全体のうち一部しか対象にできないという限界があると記されている[6]。

関連する読み方への入口

認証と価格の関係はフェアトレード・スペシャルティ・コモディティの違い、生産者から消費者までの流通の各段階はコーヒーのサプライチェーン、産地と焙煎店の直接取引はダイレクトトレードとリレーションシップコーヒーで扱っている。

結論

生産者の取り分は、世界価格に対する割合では1980年代後半から90年代前半の流通改革を経て多くの国で上昇したのに対し[1]、消費国の小売の金額に対しては、小売販売額が増えるなかで生産国の輸出収入が減り[2]、小売価格に占める生産者の割合も縮小した[3]。この逆方向の動きは、分母が世界価格か小売価格かという違いによって生じるもので、どちらか一方だけを見て「生産者の取り分」を一言で語ることはできない。焙煎・小売側の価値付加と、コーヒー以外の費用の増大という2つの要因が、小売価格に占める生産者の割合を縮小させてきたとされる一方[5]、供給網の費用と利幅の全体像は現在も不透明な部分が残っている[6]。数字を見るときは、分子・分母・年・推計元の4点をそのつど確認し、異なる前提の数値を同じ基準で比較しないことが、この分野の資料を読むうえでの出発点になる。

参考文献

  1. Krivonos, E.「The Impact of Coffee Market Reforms on Producer Prices and Price Transmission」World Bank Policy Research Working Paper 3358, July 2004
    http://documents.worldbank.org/curated/en/649281468779178427/pdf/wps3358.pdf
  2. ICO「Lessons from the world coffee crisis: A serious problem for sustainable development」(ED 1922/04・18 June 2004)
    https://www.ico.org/documents/ed1922e.pdf
  3. FAO「Commodity Market Review 2003-2004」所収 Hallam, D.「Falling commodity prices and industry responses: some lessons from the international coffee crisis」
    https://www.fao.org/4/y5117e/y5117e03.htm
  4. Fitter, R. & Kaplinsky, R.「Who gains from product rents as the coffee market becomes more differentiated? A value chain analysis」IDS Bulletin 32(3):69–82, 2001
    https://assets.publishing.service.gov.uk/media/57a08d6740f0b652dd00195a/R7948JnArt.pdf
  5. Lewin, B., Giovannucci, D. & Varangis, P.「Coffee Markets: New Paradigms in Global Supply and Demand」World Bank Agriculture and Rural Development Discussion Paper 3, March 2004
    http://documents.worldbank.org/curated/en/899311468167958765/pdf/283000REVISED0Coffee1Markets01PUBLIC1.pdf
  6. ICO「Coffee Development Report 2020: The Value of Coffee」
    https://www.icocoffee.org/wp-content/uploads/2022/11/CDR2020.pdf

この記事を書いた人

Coffee Pick Lab は、コーヒー知識メディア Coffee Pick をつくっている編集ラボです。国際コーヒー機関や全日本コーヒー協会の統計、ISO や公正競争規約などの規格・法令、査読論文、生産国の公的資料——一次資料を原典で読むことを出発点にしています。英語や現地語の資料の読み解きと下書きにはAIを使い、数字・年代・固有名詞は人が出典に当たり直して、裏が取れないものは落としてから公開します。編集方針と制作工程は運営者情報にまとめています。

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